第5話 騎士団長覚醒編
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騎士団長「うぅ……泣いてたら親切な漁協のおじさんたちに助けてもらって近くの駅まで送ってもらえた……ありがとうクソ田舎の人々……」
騎士「そのまま帰ってこなければよかったのに」
騎士団長「ガタイのいい漁師のおっちゃんたちに囲まれた時は『そういえばこんな展開の陵辱系エロ同人誌読んだな』と思い出してもう心臓バクバクだったわ……」
騎士「こいつの心臓一回止まんねぇかなあ……」
△ △ △
女騎士「く、またも目隠し! 今度は車でどこに連れて行くつもりだ!」
山賊「くっくっく、そんなに期待されると照れるな……ほらついたぞ」
ギュイーギュィーン ギュオオオオオ
女騎士「な、なんだこの不気味な音は!」
ギュオオオオオン……
山賊「くっくっく、そんなに怯えるなよ……さぁできたぞ、目隠しをとってやろう……ほら、温かいうどんだよ」
女騎士「わぁ、うどんやホットサンドの販売機が沢山!」
△ △ △
女騎士「おのれ……この私をどうするつもりだ!」
薄暗い部屋の中で、鎧の女は叫ぶ。流れるような金髪、色素の薄い肌。平素ならば凛々しさと勇敢に満ち溢れたその表情には、今は恐怖と動揺が浮かぶ。
彼女は今、拘束されていた。自由を奪われ、目の前の男に生殺与奪を握られている。
女騎士「答えろ!」
山賊「くっくっく、元気なお嬢さんだな……これは躾がいがありそうた……」
彼女の自由を奪った男は、黒々とした髭を生やしていた。樽のような体型。目には残虐と嘲笑がある。
女騎士「どのような理不尽に合おうとも、私は屈さない!」
誇り高き女騎士の、孤独な戦いが始まる。
△ △ △
女騎士「な、なんだその奇妙な棒は……? 新手の拷問具か何かか!?」
山賊「くっくっく、これが拷問具? やれやれユニークなお嬢さんだ……これはこうして潰したご飯をつけて直火で焼いてだな……本格きりたんぽの完成だ! さあこれを用意してある濃口醤油ベースの地鶏スープの鍋にいれれば……こ、これは!
おいオーク! なんだこれは!」
オーク「す、すまん……比内地鶏のガラは手には入ったが、肉の方がなかった……代わりに青森産シャモロックで代用したんだ……」
山賊「おまえほどの男がこんな初歩的なミスを犯すとは思っていなかったぞ! 秋田産あきたこまち! 秋田産せり! そして秋田産比内地鶏! この三つが揃わねば本物の秋田名物きりたんぽ鍋とは呼べない! こんなものは女騎士には出せん、俺たちで食うぞ!」
女騎士「私、別にそれでもいいんだけど……?」
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騎士「……」モソモソ
騎士団長「……」モソモソ
騎士「……」モソモソ
騎士団長「……」モソモソ
騎士「……いくら予算がないからって夜食はカロリーメイトだけってのは勘弁してもらいたいですよね」
騎士団長「うぅ、カニ食べたいよぉ……私も誘拐されたい……」
騎士「こうやって犯人の動画見てると、健康にんにく卵黄とか黒酢カプセルとか健康食品の広告がやたら多いな……」
騎士団長「あぁ……今度は川越にウナギ食べにいってる……」
騎士「とにかくこいつと連絡を取りましょう。アカウントにメールを送ってみます」
騎士団長「そうか……よし、できるだけターゲットが食いつきやすい文面を考えよう。私に任せてくれ」
△ △ △
女騎士「捕らわれて早数ヶ月……だが私は諦めない!」
山賊「くっくっく、なにをぶつぶつ言っている? 今日の夕飯は焼肉屋にいくぞ……」
女騎士「店は?」
山賊「叙々苑だ。予約を入れてある」
女騎士「やったあ!」
山賊「さて支度を……ん? メッセージが来てるな」
件名・当方巨乳です。誘拐希望。誘拐してくれませんか?
山賊「いたずらメールか、削除っと」ピッ
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騎士団長「なんでだ! 私Fカップあるのに!」
騎士「だめじゃねぇか。団長の唯一の武器の胸が通じないとか打つ手ねーぞ! あんたただの無能確定だよ!」
騎士団長「お前ほんとあとでぶっ殺すぞ! こう、誘拐されたいって熱意を押し出すべきかな?」
騎士「うーん、もっとこうストレートに聞いてみるのはどうですかね? 『うちのブタお邪魔してませんか?』みたいな」
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女騎士「捕らわれて早数ヶ(以下略
山賊「くっくっく、とうとうセリフを省略しだしたな……ん? またメッセージか」
件名・蟹蟹蟹ウチのブタ蟹蟹蟹お邪魔してませんか?蟹蟹蟹食べたい
山賊「……? またいたずらメールか、削除っと」ピッ
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騎士「何だよこの怪文書はよぉ!」
騎士団長「だって私も蟹食べたかったんだもん!」
騎士「欲求を抑えろよお前は動物か!」
騎士団長「こうなったら持てる武器を全部乗せてみよう!! 私も覚悟を決めた!」
△ △ △
女騎士「(以下略
山賊「くっくっく、もうセリフさえマトモにいわなくなったな……ん? またメッセージか……」
件名・巨乳Fカップです蟹食べたいセフレ募集蟹ブタお邪魔してません当方処女誘拐希望いたずらメールではありません
山賊「今日はいたずらメール多いなぁ……」ピッ
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騎士「怪文書のレベル上がっただけじゃねぇか!」
騎士団長「なんでだよぉ!処女まで暴露したのにぃ!」
騎士「なんだよこの処女って!?」
騎士団長「高級Aランク牛や蟹が食べ放題なら私は喜んで膜の十や二十懸けるぞ!」
騎士「オメーのヤッスイ膜なんかどうでもいいんだよ!って、え、膜? ……マジで? その年で? マジで現存してんの?」
騎士団長「なんだよ、その反応は!?」
騎士「えぇ……正直引くわぁ……ていうか職場の人間のそんな話とかぶっちゃけ聞きたくなかったし……」
騎士「つーかなにこのセフレ募集とか? 毒餌バラまいても食いつくわけねーだろ!」
騎士団長「我が身を犠牲にする覚悟を毒餌っていうなぁ!」
騎士「手段選ばずに蟹食いたいだけだろあんた!」
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騎士「なぁ……団長?」
騎士団長「……」
騎士「あんた……このアカウントでなにやった? 正直に言え」
騎士団長「えーと、女騎士と旅シリーズの再生回数がめっちゃ多くて、コメントの誉めてるやつばっかで」
騎士「うん」
騎士団長「なんかだんだんむかついてきて」
騎士「うん」
騎士団長「コメント欄に『僕も女騎士ちゃんのほかほかアワビをおいしくいだだきたいですよ!』って書いたらコメント削除されてアカウントブロックされました」
騎士「もうこのアカウントじゃ連絡取れねーじゃねぇかなにやってんだよあんたは!」
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