第6話 女騎士激闘編

 △ △ △


女騎士「く、またも目隠し! また波の音が……今度こそ私を海外に売る気か! それとも溺れさせるのか!」


山賊「くっくっく、もう自分から目隠しするようになりやがって……

さあ今度は潮干狩りだ! ここは穴場でな、人間は撒いたやつじゃない天然のあさりが取れるスポットだ!」


女騎士「わぁい!」


山賊「近くに素潜りできるところもある! 漁師さんからは許可をもらってあるから伊勢エビも捕まえられるぞ!」


女騎士「私泳げない……」


山賊「じゃあ俺が取ってこよう。お前はバーベキューの準備を頼む」スタスタ


女騎士「よぉしわかった! ……あれ」(あれ、今私逃げる大チャンスじゃ……?)


山賊「あさりは一晩砂抜きしないと食えないからな! アジトに持って帰って朝から酒蒸しと味噌汁だ!」


女騎士「やったあ!」(逃げるのは今度にしよう)


 △ △ △


女騎士「おのれ……この私をどうするつもりだ!」 


 薄暗い部屋の中で、鎧の女は叫ぶ。流れるような金髪、色素の薄い肌。平素ならば凛々しさと勇敢に満ち溢れたその表情には、今は恐怖と動揺が浮かぶ。

 彼女は今、拘束されていた。自由を奪われ、目の前の男に生殺与奪を握られている。


女騎士「答えろ!」


山賊「くっくっく、元気なお嬢さんだな……これは躾がいがありそうた……」


 彼女の自由を奪った男は、黒々とした髭を生やしていた。樽のような体型。目には残虐と嘲笑がある。


女騎士「どのような理不尽に会おうとも、私は屈さない!」


 誇り高き女騎士の、孤独な戦いが始まる。


 ▲ ▲ ▲


騎士団長「ねぇ、ホントにやるの……?」


騎士「しょうがないでしょう。メッセージ送っても反応無いし、アカウントも使えない。新しいアカウントから動画投稿してある程度有名になってからコンタクトを取るようにしましょう」


騎士団長「でもなんで私こんな水着着させられてるのぉ……」ムチムチ


騎士「予算がないッスからね。とりあえず団長にも働いてもらわないと。さあその状態からこの激辛ペヤングにデスソースをかけて食って下さい。はい撮影スタート」


騎士団長「こんなんで本当に再生数稼げるのぉ……?」ズルズル


騎士「まずはやれるところからやりましょう。予算ないんですよ、はいそこでダブルピース!」


騎士団長「げ、激辛ペヤングおいしぃでしゅうううう!!」ダブルピース


 ▲ ▲ ▲


騎士「全然だめだな……再生数300もいかねぇ……誘拐犯の女騎士と旅動画は三日で三十万再生なのに……! しいたけ狩りしてしいたけ焼いて食ってるだけの動画がなんでこんな再生数いくんだよ……!」


騎士団長「ねぇ……女騎士もう助けなくていいんじゃないかなぁ」


騎士「カメラじゃ写らないところであいつがどんな目にあってるかわからないんですよ! そんなこといってる場合ですか!

というわけで次の動画を取ります。今度は一平ちゃん焼きそばチョコ味とショートケーキ味を食べてレビューしてください」


騎士団長「えぇ……カニ食べたいよぉ……」


 △ △ △


女騎士「く、まさかこんな虐待を受けるとは……! これが捕虜に対する扱いか! 私は断固抗議するぞ!」


山賊「くっくっく、あさりの砂抜きが甘かったからといってそこまで怒るなよ……」


山賊「ん? 新着動画か……」


『女騎士団長が水着でコロッケ揚げてみた!』


山賊「そういう奇をてらいすぎるのはダメなんだよなぁ……」


 ▲ ▲ ▲


騎士団長「コロッケの油跳ねメッチャ熱かったよお……」


騎士「ちくしょう! またダメだ! なぜだ! なぜ俺はこの誘拐犯に勝てない!」


騎士団長「ねぇもうなんか目的変わってない……?」


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