第2話 騎士団長登場編

女騎士「く、また目隠しか! 今度は何をするつもりだ! 寒い……外? 私を凍死させる気が!」


山賊「それもまた一興……だがもっと楽しいことをしようか……?

そぉら、その穴あけ器で湖の氷に穴を開けろ! ワカザキ釣りを始めるぞ!」


女騎士「わぁい!」


山賊「天ぷらを揚げる準備もしてある! 釣ったそばから揚げられるぞ!」


女騎士「ビールは!?」


山賊「もちろんあるぞ!」


 △ △ △



女騎士「おのれ……この私をどうするつもりだ!」 


 薄暗い部屋の中で、鎧の女は叫ぶ。流れるような金髪、色素の薄い肌。平素ならば凛々しさと勇敢に満ち溢れたその表情には、今は恐怖と動揺が浮かぶ。

 彼女は今、拘束されていた。自由を奪われ、目の前の男に生殺与奪を握られている。


女騎士「答えろ!」


山賊「くっくっく、元気なお嬢さんだな……これは躾がいがありそうだ……」


 彼女の自由を奪った男は、黒々とした髭を生やしていた。樽のような体型。目には残虐と嘲笑がある。


女騎士「どのような理不尽に合おうとも、私は屈さない!」


 誇り高き女騎士の、孤独な戦いが始まる。


 △ △ △


女騎士「く、また目隠しか! 今度はなにをするつもりだ! 言え山賊!」


山賊「くっくっく、相変わらず生きの良いお嬢さんだ……だって、卑怯だと思わないか……? あんなふうにきれいな映像を流して、『そうだ、京都に行こう』だなんてなぁ……?」


 △ △ △


女騎士「め、目隠しを取るぞ……!ここが京都か……! いざ初めての京都……!

……あれ、いつものアジトだ」


山賊「くっくっく、京都は警察官が多かったからUターンして戻ってきたんだ……心配するなお土産は買ってきたぞ……? だから京都は今度な」


女騎士「えぇ……」


 △ △ △


女騎士「私は……なんとしても父母の元へ、仲間たちの元へ帰らねばならない!

こんなところに捕らわれ続けるわけにはいかない! 見ていろ、必ず私は自由になってみせる!」


山賊「くっくっく、健気なことだな……しかしお前は本当に自分が自由になれると思っているのか?」


女騎士「私は! 絶対に諦めない!」


山賊「ところで今期のアニメはこのハードディスクに全話録画してあります」


女騎士「もうすこしここにいてもいいかな!」


山賊「諦めるな」


 ▲ ▲ ▲


騎士「ちくしょう! 女騎士がさらわれて早数ヶ月……行方は未だわからない!」


騎士団長「彼女は気丈だが美人だったからな……今頃はどんな陵辱を受けているか……あるいはもう殺されているのかも」


騎士「団長! 俺たちがあいつの生存を信じなくて誰が信じるんですか! しっかりしてくださいよ!」


騎士団長「済まない……だがどうしても悪い予想ばかりが頭を埋め尽くしてしまう……なんとしても彼女の居場所を探らねば……」


騎士2「騎士団長! 女騎士の消息がわかりました!」


騎士団長「なんだと!?」


騎士2「ユーチューブで北陸でうまそうに蟹食ってるところが映ってます!」


騎士「」


騎士団長「もう助けなくていいんじゃないかなあこれ」



 ▲ ▲ ▲


騎士「なんだこりゃ、『女騎士と旅シリーズ』? すげえ再生回数いってるな……」


騎士団長「いいなぁ……私もカニ食べたい……」


騎士「コメント欄見ると目隠しされてる美人にグッとくるって感想が多いですね……」


騎士団長「あぁ、そういうのなんかわかるわぁ……」


騎士「えぇ……」


騎士団長「この女騎士が涙目で生八つ橋食べてる動画はなんだ?」


騎士「『京都に行けなかった記念』と書いてありますね……?」

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