女騎士「体が熱い…さっき飲まされた媚薬が!」山賊「バカめ、あれは媚薬じゃない」

上屋/パイルバンカー串山

第1話 女騎士拘束編


山賊「養命酒だ」


女騎士「く、ならば一緒に飲まされた怪しげなカプセルは!?」


山賊「くっくっく、とんだ勘違いだなぁ……あれはサメ軟骨サプリメントだ!」


女騎士「く、関節が滑らかになってしまう……!」



 △ △ △


女騎士「おのれ……この私をどうするつもりだ!」 


 薄暗い部屋の中で、鎧の女は叫ぶ。流れるような金髪、色素の薄い肌。平素ならば凛々しさと勇敢に満ち溢れたその表情には、今は恐怖と動揺が浮かぶ。

 彼女は今、拘束されていた。自由を奪われ、目の前の男に生殺与奪を握られている。


女騎士「答えろ!」


山賊「くっくっく、元気なお嬢さんだな……これは躾がいがありそうだ……」


 彼女の自由を奪った男は、黒々とした髭を生やしていた。樽のような体型。目には残虐と嘲笑がある。


女騎士「どのような理不尽に合おうとも、私は屈さない!」


 誇り高き女騎士の、孤独な戦いが始まる。


 △ △ △



女騎士「や、やめろぉ! そんなどろどろして白いものを私に飲ませようとするなぁ! なんだそれは汚らわしい!」


山賊「くっくっく、ずいぶんと抵抗するな……? これがなにがわかるのか……?

だが口をこじ開けてでも飲んでもらうぞ……せっかく手作りしたカスピ海ヨーグルトだからなぁ!」


女騎士「く、殺せええ!」


山賊「このあとは大豆イソフラボンと健康にんにく卵黄も飲んでもらおうか!」


 △ △ △


女騎士「く、なんだこの目隠しは!? なにをする! 処刑か? 私を処刑するつもりだな!」


山賊「くっくっく、そんな簡単に楽になれるようなことをすると思うか……? ほら目隠しを取ってやろう……」


女騎士「こ、これは……!」


山賊「お誕生日おめでとう……ケーキ手作りしてみたよ」


 △ △ △


女騎士「く、なんだ……私が寝ている間に、私の体になにをした!」


山賊「くっくっく、美女が寝息をたてているんだ……男がなにをするか、誰だってわかるもんだろう……?」


女騎士「この痴れ者め!」


山賊「ネイルアートをやってみたんだ……どうだい、レアなビーズをふんだんに使ってみたんだぜ……?」


女騎士「わぁ……綺麗……」


 △ △ △


女騎士「山賊に捕らわれて早数ヶ月……だが私は諦めない! 絶対に脱出してみせる!」


山賊「くっくっく、相変わらず威勢のいいお嬢さんだ……それでお雑煮のお餅いくつ食べる?」


女騎士「四つ!」


山賊「数が悪いから五つにしなさい」


 △ △ △


山賊「やれやれ、逃げ出そうとするとはな……はしたないお嬢さんだ」


女騎士「く、捕まってしまった……どのような目に合わされても、私の決意は揺るがない!」


山賊「そりゃ見上げたもんだ。じゃあ罰としてお前には……」


女騎士「やってみろ! どんな責め苦にも耐えてみせる!」


山賊「与えている晩酌のビールを発泡酒にする」


女騎士「く、殺せええ!」


山賊「耐えろよ」



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