雛支度(第53回 使用お題「嫁入り道具」「桃の花」)
今年もこの時期がきた。
二月のよく晴れた日に、私はトランクルームに車を走らせる。
重くはないけれど、詰め物でかさばる箱をふたつ。それより小振りでもう少し重い箱をひとつ。さらに小さくて、一番軽い箱をひとつ。
運びだした箱たちを車に積んでから、お花屋さんに寄って桃の花を二枝買ってから帰宅する。
まず、玄関先で最初の箱を開いた。厳重に包んだ新聞紙の中から出てきたのは、古めかしい大振りなお内裏さまの人形。同じデザインのもうひとつの箱にはお雛さまが入っている。
これは、おばあちゃんの嫁入り道具で、お母さんから私に持たされたもの。詳しいことは分からないけれど、着物の柄が凝っているのでとてもいいものなのだろうと思う。軽く表面を叩いてから、下駄箱の上に飾る。
リビングに入ってから、次の箱を開く。玄関に飾ったものの半分くらいの大きさの木目込の親王飾りが出てきた。これは、お母さんの嫁入り道具。新居が一軒家ではなくマンションだから、おばあちゃんのものより小さいお人形を選んだ、と聞いている。ただ、木目込なのでおばあちゃんのものより重い気がする。
リビングの壁に沿って、私の腰の高さのアイロン台を出かける前にセットしておいた。下駄箱の上はおばあちゃんのお雛様で埋まっているので、おかあさんのお雛様はここに置く。
アイロン台にはまだ少し余裕があるので、最後の箱から出した私のお雛様を載せる。
私が結婚する時に持ってきたお雛様は、掌に載っかる大きさのちりめん細工のお雛様。広いマンションに住めるとは思っていないので、最悪の場合はトイレの窓際にでも置けるような大きさで、収納に場所をあまり取らないようなお人形を選んだ。
三世代分のお雛様を並べると、その違いになんだか淋しくなってしまうけれど、それでもこうして全部を飾れるのは嬉しいと思ってしまう。
お雛様の入っていた箱をクローゼットの隙間に押し込んで、桃の花をおばあちゃんの親王飾りの両側に飾る。
もうすぐ、娘が小学校から帰ってくる。娘が折り紙で作ったお雛様を、私の親王飾りの横に並べて、今年も雛祭りの準備が終わる。
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