ペット(第65回 使用お題「人見知り」) ※殺伐注意

 きのうは済みません、うちの主人が怒鳴り込んでしまって。

 奥さまにお礼に伺う前に、あんなことになって本当に済みませんでしたわ。

 ええ、あの後は大丈夫です。奥さまがうまく説明して下さったおかげで。ほんと、奥さまには何から何までお世話になって、どれだけお礼をしても足りないくらいですわ。

 こんないい子が来たんですよ…って奥さまにご報告しようと、今日ここに連れてきたかったんですけど、すごく人見知りする子で、まだ私の顔を見ても部屋のすみっこに逃げちゃう状態で。奥さまの子はすごく人なつこいのに、個体差ですかねえ。

 そうですか、奥さまの子も最初はすごく警戒してたんですか。環境が変わるから仕方ない、と。はい、あせらずにじっくり慣れてもらうのを待ちます。

 こうして、奥さまにいろいろお話しを聞かせていただくと、私、主人の心得が全然できてないのがますますよく分かって、恥ずかしくなります。

 そうですわね、誰もはじめから「主人」じゃないんだから、「主人」になっていくように努力していかないといけませんわね。そうじゃないと、うちに来たペットが可哀想ですわね。

 主人ですか? おかげさまで、文句言わなくなりました。珍しいことではないっていう、奥さまの説明が効きました。特に、あそこの会社の社長も何匹も飼っている、っていうのが効いたようですわ。主人、あそこの会社を勝手にライバル視してますからね。ふふふふふ。

 それどころか、奥さまからいただいたパンフレットをじーっと読んでますわ。気になっているみたいです。主人が主人用のペットを持ってくれたら、私のペットを嫌がることもなくなるでしょうから、そうなってほしいですわね。もし主人から仲介のお願いがありましたら、またよろしくお願いしますわね。

 すごくいいことですよね、これ。

 死刑囚の容姿を主人の好みにカスタマイズして、一般家庭に払い下げするのって。

 当人は処刑されるか誰かのペットになるかの二択で了承の上でペットになるのだし、主人は自分の趣味にぴったりの人間を身近におけるし、国庫には払い下げ料が入る。誰も損をしない、いい方法ですわよね。

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