第8話 姉妹配信

 あれからも、行ったり来たりの日常は続いていた。


 ただ、彼女の病状が思いのほか悪く、木曜日の配信のための外出ができるかどうか、という話は友人から聞いた。そんな風にはまったく見えない放送を続ける彼女は本当に強いんだな、私は彼女にただただ驚かせられるばかりであった。




 そして、約束の木曜日。16時に、彼女は私の部屋へ来た。


 2人同時に別アングルから撮影しながらの配信。


「聖美おねえちゃんの妹です♪」

「聖美おねえちゃんの妹の姉の、聖美です?」

「おねえちゃん、何言ってるの?」

「さぁね、何だろうね?」


 2人がかりでもチャットを追いかけることができない様子が見える。が、実際は私はチャットに張り付くことができたので、単にこの2人が姉妹かどうかはともかくとして2人同時配信ができる程度の仲であるとは信じてもらえている様子が伺えた。


 病院食の話、リハビリの話、手術後の話――どれも初めて聞く話だったが、にはこう答えさせる。


「あなたね、毎日毎日同じことばかり言っておいて、まだ言い足りないの?」

「ち、違うよ! 視聴者のみなさまにご説明なの!」


 虚を付かれた【妹】は、それでもよく回る頭で返してくる。


 2人とも普通に喋っているだけ、にしか見えない、そう確信できて、久しぶりに生きているという実感を得ることができた。今まで来たことのなかった視聴者までもが流れ込んできたときは、えもいわれぬ感動すら覚えた。

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