第7話 悲報

 ある日、友人から連絡があった。友人の娘、つまりが、発作を起こしてしまい、これから緊急手術をすることになった、いつ終わるのか見当も付かないらしい、とのことだった。


――こんなときこそ、だ、と私は強く思った。


 早速配信をスタートして、哀しげな顔をせず、声だけ震えさせて、喋らせる。


「みなさんと言ってもいいでしょう、ご存知の私の妹、入院中の妹が、緊急手術をしなければならないことになりました。

 いつ終わるのか見当も付かないとのことで、病院に居るよりもここで配信を続けた方があの子のためになると思い、配信しています。薄情者だと思われても、私は一向にかまいません。

 ですからみなさん、ふたつだけ約束を守ってください」


 ざわつき、一瞬でスクロールしていくチャットルーム。


「ひとつめですが、まず、妹のチャンネルはオフラインですので、妹の手術がうまくいったときに読んでほしいメッセージを書き込むだけの用途で使ってください」


 ざわついていたチャットルームがしん……と静まり返る。どうやら、最初のうちはPV稼ぎだと思ったのも多数いたようだ。現代においては、それが正しい判断だろう。


「ふたつめのお願いをします。――させてください。

 手術が終わり次第、2人で一緒に配信しますので、必ず観に来てください」


 チャットルームに並ぶ、いろいろな文字。少なくともいま聞いていて書いてくれたひとは、彼女の無事を信じて願っているということだ――むろん、私もだ。




 そして彼女の手術は無事成功し、2人での配信の日程を決める運びになった。


「来週の木曜日なら外出許可が取れるから、その日にどこかで」

「わかったわ、じゃあその日に私の家にいらっしゃい」


 わざと2人の視聴者の目に留まるように、私のチャットルームで話しておいた。

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