第3話 買い物

 ひきこもりとはいえ、こういったパーツを買うなら、もちろん外に出なければならない。たとえそれがいまだ経験したことのない死よりも苦痛だと感じたとしても、だ。もしかしたら死の方が意外と苦痛ではないのではないか、などと考え始める年齢にもなると、本当にがいくらでもできてしまうのだ。


 まずは髪を染めたことにでもするか、と思い、ウィッグを売っている店に来てみた。が、どれもピンと来ない。そもそも聖美の髪は、3Dプリント技術を最大限に駆使して、髪の毛1本1本まで自然に動くほどの繊細な部品なのだ、その上からウィッグでは、あまりにみすぼらしいのではないか?




 などと考えながら店内を見回していると、聖美のことで手を貸してくれた友人の娘の姿が見えた。――まだ中学生だからな、染めるには早い、ということか。勝手に納得した私は、特に声をかけるでもなく、ウィンドウショッピングにも見えそうな、死にそうに苦痛な時間を過ごした。


 何を見ても、安い素材で一時的にボディを作った方がまだマシだ、としか思えなかった。


 結論を言ってしまうと、大学生になる前の聖美を創ることにしたのである。


 そもそも、最初に聖美を創ったのはもう6年も前のことになる。幸いにして資産だけは豊富にあるから、幾度も幾度も作り変えては配信に使っている。


 今回も、そのだ。


 私はそう自分に言い聞かせて、3Dプリンタ用の素材だけを買い、資料は脳に焼き付けて、家路に付くことにした。




 と、また友人の娘が見えた。今度は声を掛けるか……? と悩んでいると、あちらから声をかけてくれた。助かった、私のことを不審者だと思って通報されやしないかと、冷や冷やしていたのも事実なのだ。

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