第15話出会いと戸惑い
「わり~わり~体育会系の悪い癖が出ちまったぜ。心配すんな、友を売る様な事だけは絶対にしないから、だからこの手を離してくれ」
「奈緒の顔面パンチはこれ以上痛んだぜ? あそうだ、朝のお礼がてら体感してみるか?」
「おいおい、まさかそんな」
「僕の純情を汚した対価はデカいぜ!」
「のわああああああああああああ」
体でぶつかり合う友情ってのも良いモノだ。たまに拳で語り合うからこそ固い絆で結ばれるって何かの本で読んだ。もしかしたらヤンキー漫画だったかもしれないが、それならそれで都合が良い。ハートフルな一発お見舞いしてやるぜ。
肩パン、コブラツイスト、卍固めとコンボを決めた。
「み、雅、これで俺達はダチだ、お前の拳痛かったぜ」
けど、拓哉は決して反撃に転じることはなく、昔から馴染のある技を繰り出して満足した僕に息をあげながら拳を突き付けてきた。
良かった、拓哉もそっち系の漫画を愛読していたクチらしく、ご満悦な表情で僕に突き付けてきた拳の親指を突き立てて下手くそなウインクをしてみせた。流石って言うか、拓哉ってのは本当に気持ちが良いくらい真っ直ぐなバカである。
「なんかすまん、拓哉が良い奴だって知ってるからつい調子に乗っちまった」
「良いっての、雅がいなけりゃ奈緒ちゃんと話すきっかけなかったし、あの時勇気だしてマジでよかった。俺こそ、雅をダシにつかってゴメンな」
「な、そんな事言わなくても良いだろ! 言わなきゃ誰も気が付かない事じゃん」
「気が変わったんだよ、俺はお前とココで繋がりんだ」
立てた親指で己の心臓を指す拓哉。その姿誠にバカ丸出しである。ホント、こいつは良くも悪くも清々しい程に良い奴でバカである。それなら、僕も拓哉にだけは嘘を付かないで正直に接しようと思う。
「体育会系のノリ……嫌いじゃないぜ。改めて、よろしくな」
「へ、これからは共に恋に生きる男になるな。こっちこそよろしく」
少しだけ春香さんが奈緒に言った「改めてよろしくね」の意味が分かった気がする。関係を築き直す時に、丁度いい言葉が今回のアレなんだと思う。これから一年間。僕らの青春は聖火のごとく清らかに燃え上がり、決して忘れることのない思い出となるである。この時僕は薄っすらだが何かが少しだけ動き出した気がして変に興奮していた。
僕らが出会ったその日。教室から見える校庭はまだまだ桜吹雪の海原に沈む四月のことであった。
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