第4話 申請書類
役所の窓口でぼんやり過ごす10時半。確かに約束は11時だ。だからといって、ギリギリに来るほどバカじゃない。そう思って30分前に来たら、少々お待ちくださいと言われたまま放置プレイ。役所ってそういうもの?
11時。物腰の柔らかそうなご婦人がやってきて、あたしに声をかけた。
「生活保護の申請ですね? まずは面談になります。こちらの面談室へどうぞ」
面談室、と言われたその部屋は、まるで取調室のようだった。取調室に入ったことがあるわけじゃないけど。
「お母様を亡くされて、借金と持病があって、生活が成り立たないというわけですね?」
「はい、このままじゃ家賃も払えなくなって、追い出されてしまうのではないかと」
「あなたの状態でしたら何かしらの支援はできると思いますので、こちらの書類に必要事項をご記入ください。終わったら呼んでいただけますか?」
「はぁ……」
こんなにあっさり? と思いながら”こちらの書類”を見たら……必要事項、多すぎるんじゃない?
住所氏名生年月日。そんなことはどうでもいい。んなことより、困窮に至った経緯、持病の発病から今までの生活手段、かかりつけシャーマンの名前。借金の借入先と借入金額。家賃、平均月収etc……あぁ、ラクしてお金を貰おうなんて、考えが甘かったのかしら。
あたしが書類を書き終わったのは、とっぷり日も暮れようという17時のことだった。
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