第251話 愛しの君を追って

「ねぇ、みーちゃん。みーちゃんたらぁ、起きてるぅ?」


 隣に寝ている彼女。


 軽くすってみたけれど、全然起きてくれないの。



「……もぅ、寝ちゃったの? ねぇ、ねぇ。Did you sleep?」



 うーん。


 可愛い寝息が聞こえて来る。


 本当に寝ちゃってるのかしら……。



「……Muuum ……Oppaiオッパイ……」



「……何ですって?」



 まぁ、寝言だしね。何かの聞き間違いかな……。



「……Muuum ……Chippaiちっぱい……」



「……」



 ――ギュゥゥ……



 とりあえず私、ミカエラみーちゃんのほっぺをつねってみたの。


 えぇ、つねったわよ。


 だってそうでしょ。もし本当に寝てるんだったら、こんなは、絶対にしないはずだもの。



 ――ギュ、ギュゥゥ……



 ちょっと軽くつねるつもりが、なんだか、だんだん腹が立ってきたの。


 だって、オッパイだけで飽き足らず、チッパイ言ったのよ。


 この、チッパイって言ったの。


 だって、このお家の中に、チッパイな人って誰が居るの?


 そうよ。そうなの。


 ここから半径2キロ圏内をくまなく探してみても、チッパイに該当するのは、恐らく私しかいないのよ。


 って事はよ。


 私がこのの夢に登場してて。


 しかも、しかもよ。


 この、私の事をチッパイって呼んでる……って事でしょ!



 ――ギュ、ギュ、ギュゥゥ……



『にやー! いたたたた!』


『らっ! らにするんれすっ、美紗みはひゃん! ほっぺが、ほっぺが取れひゃいまふぅ』



「もー、やっぱり起きてるんじゃないっ! それに、そんなに早口でまくしたてられても、何言ってるか、全然分りませんよぉだ」



ひたい、ひたいぃぃ!』



 って言うか、そんなしてる場合じゃ無いのよ。


 そうよ、そうなの。じゃ無いのよ。



『ミーチャン、アルネェサマ、ドコ?』



『ふぁ、ふぁふぁ、ふぁべひまふしゃべりますからぁ、とりあえず、これひゃめてぇ』



 ちょっと何言ってるか分かんないけど。


 まぁつねったままだと、喋ることも出来ないわね。



『オシエテ、トテモ、ユックリ、ユックリ』



「痛いなぁ、もぉ。美紗ちゃんたら、あの白い悪魔と良い勝負のイジメっですよぉ。……あぁ、ゆっくり話しなさいって事ね」



『イソゲ、イソゲ!』



『もー急げなのか、ゆっくりなのか分かりませんよぉ。はいはい、ご主人様アル姉ですよね。多分、エリトリアに行ったんだと思いますよ。分かります? エリトリア、エリトリアです』



 ……エレトリア?

 

 はいはい、そう言う事ね。


 アルねー様は、エリトリアって場所に行ったのね。


 って事は、そこに慶太君も居るって事よね。


 だって、さっき一緒にお風呂に入った時に、アルねー様がそう言っていたもの。


 慶太君が、エレトリアって所に行ってて、明日には帰って来るって。


 と言うか、明日帰って来れるエレトリアって何処? って話よ。


 まぁ、さっきお風呂で聞けば良かったんだけど。


 だって、あんなを見せつけられて、それ以上、何を聞けって言うのよ。


 もう、どうやったら、こんなになるのか? 以外に、聞く事なんて無いでしょ?


 だって、考えても見なさいよ。


 一緒に湯舟に浸かって、目の前に西瓜スイカが二つも浮いてるのよ。


 しかも、フワフワなのよっ!。


 やわやわなのよっ!


 えぇ、そう言えば、私の方にも付いているわよ。


 申し訳程度に付いているっちゃ、付いているわよ。


 ママに言わせれば、『とりあえず前か後ろかが分れば、男の人はそれで良いのよ』って……。


 そんな訳無いでしょ!


 ママは良いわよ。


 だってパパみたいな、スレンダーな人が好み……って人を捕まえたんだから。


 でも、でも。私が三年かけて調査した、慶太君の好みは……少なくとも大きい方が好きなのよ。


 もう、その時点で、取返しの付かない事になっているの。


 えぇ、これは大問題なのよ。


 そんな、大問題発生中によ。目の前にその満点回答が、二つ、ぷから、ぷからと浮いているのよ。


 どっちかって言うと、どんぶらこ、どんぶらこの方が近いぐらいなのよ。


 そうなったら、もう、他の話題なんて、思いつく訳無いでしょ。


 更に、更によ。


 隣を見ると、ミカエラみーちゃんが、ちゅうちゅうしながら、フミフミしてるじゃない。


 ねぇ、信じられる?


 この娘、どうみても、もうJKぐらいなのよ。確か、十五歳って言ってたわ。


 にも関わらず、ちゅうちゅうして、フミフミしてるのよ。


 ねぇ、あなた、どう思う?


 そうなったら、もう、する事は一つだけでしょ。


 ……


 そう、やったわよ。


 えぇ、私も高校生の時には、結構な物持ってたんだから、その時の感触を忘れたわけじゃあ、無かったわよ。


 でもね。


 何て言うのかなぁ。


 他のを……って言うのは、それはそれで、違うおもむきがあるって言う事よね。


 えぇ、やったわ。恥ずかしげも無く言うわよ。


 私はやった、やりましたよ。アルねー様のお胸をお借りして……。


 パフパフを……ちょっとね。


 はぁぁぁ。良いものよねぇ。世界人類、平和になると思ったわ。


 そう、達の中には、これを『最終兵器』だって言う人も居るけれど。本当にそうなのかもしれないわねぇ……。 


 って、そんな事、どうだって良いのよっ!


 それより、アルねー様がよ。こんな夜中にたった一人で出かけて行くって、一体どう言う事?


 ……怪しい。妖しすぎるわっ。


 うぅぅん。私は信じてる。信じてるわよ。そうよ、アルねー様はそんな人じゃ無いって。


 でも、でもよ。


 まかり間違って……って事が、無い訳じゃ無い事も無い様な気がしないでも無い、かもしれないじゃない?


 それに、なんだか、アルねー様ったら、ちょっとソワソワしちゃって。


 恥じらってるって言うか、ためらってるって言うか……とにかく、とってもうれしそうなの。


 ……来たわ。


 来たわよ。


 女の勘が、ピーンと、来たわ。


 これは……男ね。男の影が見え隠れしているわね。


 そうよ、そうなのよ。


 だって、私の愛読書レディコミには、この手の話が掃いて捨てるぐらい載っているのよ。


 アルねー様の、あの


 あれは……『恋する女』の顔。


 間違い無いわ。


 まぁ、そのお相手が。慶太君でさえ無ければ、全く問題無い事なのよ。


 分かってる。分かってるわ。そんなはず無いわよね。


 でも、でも。


 確かめずにはいられない。


 明日帰って来た時に聞いても良いのよ。えぇ構わない。


 だって、私の慶太君が言う事なんだもの、私、何だって信じる。信じてる。


 ……けど。


 齢二十一も重ねると、そうも言っていられないの。


 、押えるに限るわ。


 もしも、もしもの時は、出来るだけ手前で防ぐ事が肝要よ。


 鉄は熱いうちに打て。


 うーん、ちょっと違うわね。  


 傷は浅い方が良い。


 あぁ、そっち、どっちかって言うと、そっち系ね。


 そうと決まれば、善は急げよ。



『イキナサイ ミーチャン エレトリア イッショニ!』



『えぇ、今から行くんですかぁ。でも私はもう死んでるしぃ。プロピュライアは通れないんですよぉ。そんな事しちゃったら、死んだ人が誰でも復活出来ちゃうじゃないですかぁ。私はもう行っちゃいけないんですぅ』



 何? このの『お前は知らないのか?』感?


 なんだか、上から目線な、この感じ?


 どういう事? この、年下のくせに、年長者の私に向かって、何? この偉そうな態度は?


 そう、そう言う事? 


 そんな上下関係がイマイチ分かっていない若者達。


 そんな彼女達を、しっかりキッチリ矯正する育てる上げる事も、年長者の重要な役目の一つよね。



 ――ギュ、ギュゥゥ……



「はふはふはふ、らにするんれすっ! にやー! たたたた! ふぁかりまひた、ふぁかりまひたよぉ。案内ひまふぅぅ」



 えぇ、分れば良いのよ。分かれば良いの。


 今時の若者には、そう言う謙虚さと、物分かりの良さが必要なのよ。


 どう? 身をもって経験する味わうって、大事よね。



「それじゃあ、早速、レッツラ、ゴー!」



 そう、この時の私は、意気揚々と慶太君の後を追う事に決めたのよ。

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