第238話 始動する思惑
「……と言う事だ。リヴァディアへの救援派兵の件、準備が整い次第
部屋の中央に置かれた
その
少し落ち着かないのだろうか。
ただ、男はその様子を誰にも
最初は自身の右手で押さえつけてはみたものの、結局はトガの
「はっ、
指示を受けた青年は、片膝を付き、深々と頭を垂れる。
「うむ。出立前の挨拶は無用じゃ。行けっ」
「はっ」
青年は頭を垂れたままの姿勢で立ち上がると、そのまま
本来であれば、ドア付近にいる
青年は
――パタン。
出入口のドアが完全に閉まった事を確認した後、
「アゲロス様。アエティオス准将は、手元に残しておいた方が良かったのでは?」
「ふっ、確かアエティオスは
「はっ。確かにその通りにございますな。そうしますと、
尚も
「うぅぅむ。
「で、ございますな。既に探りを入れてはおりますが、ご同意いただける見込みは少ないかと」
まるで他人事の様な言い回しではあるが、それが彼の言い方なのであろう。
アゲロスの方も、全く気にする素振りは無い。
と言うよりも、こうやってアゲロスに対して
「うぅぅむ。……サロスよ。何か
「はっ。そう言えば、昨日到着しました南方大陸からの手紙に、またしても獣人達に
「現在の総監であるガッルス将軍では
静かに
そのうち、彼はテーブルに置いてあったワイングラスを
「うむ。良い香りじゃ。若いワインの爽やかな香りも楽しいが、
「うむ。面白い話であった」
「サロス。早速ルキウスを呼んで参れ。南方大陸総監を交代させる。南方大陸城塞都市は、マロネイア家の生命線じゃ。更なる発展には、現地住民との深い
「はっ、アゲロス様のご
「うむ。何じゃ。申して見よ」
サロスはアゲロスの持つワイングラスへと、新しいワインを注ぎ入れながら話し始めた。
「この度、私が不在の際に、アゲロス様が何者かに襲われると言う事態がございました。これは
「うむ。それで」
折角問題の一つが
それもそのはず、アゲロスにしてみれば、、自身の命が狙われるなど、全く笑えない話題ではある。
「しかし、先程のお話しの通り、リヴァディアへの救援、更には、南方大陸への遠征など、
次第にワインを飲む手が止まり、サロスの話をゆっくりと脳内で
やがて、彼はワイングラスを元に位置へと戻すと、大きく息を吐き出した。
「うぅぅむ。仕方あるまいのぉ。『高貴なる者の義務』は果たさねばならぬ。そうじゃ。ワシは帝国貴族であり、エレトリア上席評議の一人である。帝国元老院からの命令を遂行する為には、
「えぇ、もちろんでございます。常に公益を第一とされる、アゲロス様ならではのご発想にございますな」
「うむ。そうであろう、そうであろう。それでは早速、この話進めてくれ」
アゲロスは満足そうに頷きながら、羽毛が詰め込まれたクッションの間にその身を沈めて行く。
「はっ。
そんなサロスからの進言に、アゲロスは口角を上げて
「あぁ、そうだな。ルキウスを呼ぶのは、
「はっ、
サロスは、
後はイリニ家政婦長に任せておけば良い。
彼女であれば、既に何人かは
やるべき事は多い。しかし、時間は不足している。
本来であれば、自分の右腕として、是非とも欲しい人材ではある。
こんな、奥女中の
しかし、まぁ、物は考え様である。
彼女がいるからこそ、自分は安心してアゲロス様のお
自分なりに納得できる答えを導き出したサロス。
彼は、すぐそこにいるであろうイリニ家政婦長に声を掛ける為、廊下へと向かうドアノブへ、そっと手を伸ばした。
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