第二十三章 海辺での争奪戦(ルーカス/ミランダルート)
第237話 誘導尋問
「おぅ、久しぶりだなぁ、お前達」
無駄に陽気な声が響く。
そこは
窓一つ無く、通路側の壁には、木製の
そんな
「あっ、バウルさん!」
「で、どうだい? たまの
「何言ってるんすかぁ。
ちなみに、鼻くそを丸めていたのは、ルーカス本人ではなく、先輩のクリスではあるが。
「たはは。いいじゃねぇか。どうだい、ちっとはまともな鼻くそが丸められる様になったかい?」
「えぇ、そりゃあもう、
鼻くそまるめの頭領って一体……。
「ほほぉぉ、そいつぁ良かったなぁ。それでこそ俺も、お前達を
「えぇ、本当にその節はありがとうございました。これでオイラも
と、最初は悪ふざけにノリノリであったルーカスも、いい加減、
「たはは、まぁなぁ、もともと
と、そこで言葉を
彼は
「思ってたんだが……って、どういう事? その後、何が続くの? まさか、まだ俺達を閉じ込めておく気じゃないでしょうね?」
「いやいや、そう言う訳じゃあ無くてだなぁ……」
「はっ! まっ、まさか……」
バウルのそんな様子に、突然ある
「もしや、忘れてたって事? 今のいままで、俺達の事忘れてた……って事じゃあ、無いですよね?」
「んん? うぅぅん。……まぁ、その
「うきー! マジか? マジっすかぁ。バウルさん。マジですかぁぁ。さっきは助けに来てくれて、神様か? って思いましたけど、今は悪魔にしか見えない。もう、どう見ても悪魔にしか見えないぃぃ!」
「まぁまぁ、そう怒るなよぉ。出してもらえるだけでも、めっけもんだろう?」
「まっ、まぁ。そうですけどねぇ……」
非常に
その程度の事ぐらいは、ルーカスにだってわかってる。
とにかく今は、出してもらえるだけでも『ありがたい』と思うしか無いだろう。何しろ彼は一刻も早くミランダ達の元へと行かなければならないのである。
そう考えた
「そんな事よりバウルさん、
「あぁ、
「しかもだ。今日、湾岸砦で働く男から
後で思えば、なぜこの時、
しかし、一週間もの間、
「えぇ! かっ
――チッ
隣で話を聞いていたクリスが思わず舌打ちをする。
この段階においても、ルーカスはその発言の重要性を認識してはいなかった。
「えっ?」
思わず隣にいるクリスの方へと振り返る
もちろん、
「なぁ、ルーカス。俺とお前は
口元を
ただ、彼の目からは、先程までの
「どうしてお前は、逃げたヤツが
「あぁ、いやっ……えぇぇっとぉ、あの、そうそう、僕たちがいたのは、奴隷妾専用館だったから。だから、メイドの誰かが逃げたのかなぁって……」
ようやく事の重大さに気付いたルーカス。
何とか言い訳を始めてはみたものの、背中には冷たい汗が
「ルーカス。今ここで知ってる事を全部俺に話しちまえ。そうすりゃ、俺だって悪い様にはしねぇ」
すっかり
その後ろには、恐らくバウル配下の兵士なのだろう。
守衛兵とは異なる兵装の二人が、短槍を突き出した状態のまま身構えている。
軽装備とは言え、完全武装の野戦兵三人。
バウルとルーカスの会話を横で聞いていたクリスは、腰に隠していた
しかし、いくらクリスが手練れとは言え、野戦兵三人と正面切って戦えるはずも無い。
正直、
それよりも、自分達の不始末で、
残念ではある。
残念ではあるが、もしルーカスが隣で
そんな
しかし、彼はそんな自分の心の弱さを振り払うかの様に、
ちょうどその時。
――ピーーーー!
突然のけたたましい警笛の音。
幾人もの守衛兵達が慌てた様子で廊下を走り去って行く。
「ちょっと待ってろ? 何かあったみたいだ」
バウルは配下の兵士二人を残し、慌てた様子で玄関フロアの方へと駆け出して行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます