第234話 はだかの付き合い(Ⅱ)

「リーティア。貴女あなたの場合ですと、一緒にお風呂に入ったと言っても、早々に皇子様が湯あたりされている訳ですから、実際のところ未遂みすい、と言うのが正しい表現でしょうね」



 やっぱり、ダニーはリーちゃんに手厳てきびしい。



「えぇぇ。でも私……皇子様の……ははは、はだかも見てますよっ!」



はだかって言われてもねぇ……」



「そそそ、それに、それに……私なんて皇子様の……ちちち乳首ちくびも見てますからっ!」



 こらこらこらっ! めずらしく反論したと思ったら、リーちゃん突然、何言い出すんだよぉ!


 いくら酔っ払ってるからって、乙女おとめの言う事じゃ無いぞ。って言うか、リーちゃんあんた飲んで無いじゃん。完全に素面しらふじゃん!



貴女あなた一体何を言い出すの? 言うに事欠ことかいて、このったら。まぁ最終的に全裸ぜんら状態の皇子様をお部屋へ運んだのは、このわたくしな訳ですから。皇子様の乳首ちくびを含め、あらゆる場所を拝見させて頂いた……と言う意味では、逆に私の方が一歩も二歩もリード、と言えるのでは無いでしょうか?」



 えぇ?! ダニーまで何言い出すの?


 って言うか、ダニーもその場に居たって言う事?


 あれれ? ダニーさっき帰って来たばっかりだよね。


 およよ? そう言えば慶太にーちゃん、何処行ってるの?


 あぁ、じーちゃんの家かぁ。はいはいはい。じーちゃんの家も、デッカイものねぇ。私は入った事無いけど、大きな蔵が三つもあって。


 昔から佐伯さんはこの辺りの大地主さんだからねぇ。


 うんうん。当然風呂もデカいんだろうねぇ。


 ん? ……ははぁん、そう言う事かぁ。ようやく理解したぞ。


 例えばだよ?


 慶太にーちゃんが、久しぶりにじーちゃん家の風呂に入っていたとしよう。


 その時たまたまリーちゃんが、湯加減ゆかげんか何かを聞きに行ったに違いない。


 だって、リーちゃんは、じーちゃん家のお手伝いメイドさんだからね。そのくらいの事はするよね。


 しかし、いくら声を掛けても返事が無い。


 おりょりょ、これはオカシイ……って事になる訳だ。


 そんでもって、慶太にーちゃんが、湯あたりでフラフラになっているのを偶然ぐうぜん見つけたと。


 はいはい。それならありそうだよねぇ。


 確かに、リーちゃん、お手伝いメイドさんなんだから、お役目の最中って事で間違いない。


 リーちゃんの言う『一緒にお風呂に入った』って部分は、こっそり話を『』って事だなぁ。意外とヤルなぁ、リーちゃん。


 まぁ、同じ屋敷の中にダニエラさんが居たのなら、そんな事は百も承知。


 その後、ダニエラさんが、慶太にーちゃんを運んで、介抱をしてから、ちょっと遅れてやって来たって訳だな。


 あぁ、それなら辻褄つじつまが合うよねぇ。


 確かにねぇ。リーちゃんが、ガッツリ成人男性の慶太にーちゃんを運び出すのは、なかなか厳しいものがあるしねぇ。うんうん。分かる。分かるよぉ。乙女には、ちょっとむずかしいよねぇ。うんうん。


 えぇ? 何、恥ずかしがってるの? って?


 いやいや、違う違う。体格的によ。体格的に。


 だって、ダニーなんて180センチ以上あるんだよぉ。慶太にーちゃんなんて、軽々だよ。軽々。わはははは……はっ!


 ……やばいやばい。 何だか知らないけど、ダニーが私の事にらんでる。


 なぜだろう。時々、ダニーって人の心読むよね。


 うーん、底知れぬ女、ダニー。



「私だって慶太くんの乳首ちくびぐらい、見た事ありますよ。えぇ、ありますとも」



 えぇぇ。美紗ちゃんもあるのぉ。どんだけ負けず嫌いなんだよぉ!


 確かに、今の所、彼女なんだから、乳首ちくびの一つや二つ、見た事があってもおかしくは無いけどさぁ。


 って言うか、もう『すべらない話』じゃなくって、単に『慶太にーちゃんの乳首ちくびを見た選手権』になってるじゃん。もーすっかり方向性変わってるじゃん!



「へっ、へぇぇ……。美紗ちゃんは皇子様の乳首ちくびをどこで見たんですか? 私なんてお風呂場ですよ。お風呂場っ!」



「どこでって……そのぉ……」



 リーちゃん、何処で見たのかは、そんなに重要か? 重要なのか? もう勘弁してやれよぉ。言える訳無いじゃん。今カノだよ? そんなもん、言える様な場所の訳無いだろぉ? 完全に駄目な場所に決まってるじゃん。本当にもー。分かってそうで、分かって無いんだよなぁ、リーちゃん。結局、経験不足なんだよねぇ。



「プププ……プールで……」



「「「えー! プールゥ?」」」



 って、美紗ちゃん! プールかよっ。プールなのかよっ!


 そりゃそうだろうよ。プールだったら、裸だろうよ。あたしゃてっきり、ご休憩でヤッちまったのかと思ってたよ。って言うか、この話の流れで、良くプールの話持ち出してきたなぁ。良い度胸だよ。美紗ちゃん、はがね心臓しんぞうだよあんたっ!



「はぁ、何を言い出すのかと思ったら、プールですって? 美紗ちゃん。私達は皇子様と『裸の付き合い』の件についてお話ししているんですよ。水着を着ている段階で、このお話しに参画する資格はございませんね。大体、ご自分の乳首ちくびさらししていない状態など、まったくもって、論外っ!」



「くっ……それは……」



 おいおい。リーちゃん。あんたがたじろいでどうするんだよぉ。さっき慶太にーちゃんと一緒に風呂に入ったって言ってたじゃん。それじゃあ、完全にウソだってバレバレじゃん!


 って言うか、ダニー! 一瞬スルーしそうになったけど、ダニーは自分の乳首ちくびさらしてたって事? 慶太にーちゃんに、びーちく見せちゃったって事?


 やっぱり大人のする事はエグイッ。めっちゃエグイ。


 それよりも、どんなシチュエーションでさらしちゃったの?! めっちゃ聞きたい、めっちゃ聞きたいわっ!



「えぇぇ慶太けーちゃんの乳首ちくびがどしたん?」

(翻訳:えぇ。慶太けいたさんの乳首ちくびがどうしたんですか?」



 ほらほらほらぁ、みんな乳首ちくび乳首ちくびって言うもんだから、アル姉酔っ払いが寄って来ちゃったじゃーん。

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