第214話 襲撃
「っふぅ……っふぅぅぅ……」
その
ただ、その
少女は
薄暗く、ジメジメとして、誰からも忘れ去られたかの様な、その
その
彼女は通り側から随分距離を取った場所で立ちつくし、静かに人の群れを眺め始める。
いや、そうではない。
大通りの中央に現れる
やがて、
優雅に舞い踊る
それらを
そして……。
彼は周囲に警戒の目を配りながらも、自身に向けられた黄色い
……時は来た。
「っふぅぅぅ……」
呼吸を止め、
すると突然。
少女は
一体どうしようと言うのか。
彼女と
そんな事はお構い無し。
彼女は更に加速して行く。
そして。
「はっ!」
――タンッ、タンッ、タンッ!
掛け声一発。
彼女は自身の右側の壁を蹴り上げると、その反動を利用して今度は左側の壁へ。
更にもう一度右側の壁を蹴り上げた時点で、彼女は建物の二階を優に超える高さにまで到達。
――バタバタバタッ!
走りこんで来た勢いそのままに、麻のシーツをマントの様に
彼女の腕には、既に渦とも炎とも取れる黒い
眼下に見える群衆。
更にその先、
その証拠に、未だニヤけた笑いを周囲に振りまいているでは無いか。
彼女は更に想いを巡らす。
このまま
その
そして、今まさに
――ドスッ!
自身の
「……グオボッ」
今の
胃液とともに大量の血液が彼女の口から
――バアン!
「ギャンッ!」
しかも、
「くっ!」
このままでは頭から地面に落ちる。
――ダァン、ダダァン!
結局、建物二階の高さから、地面にそのまま落下。
「ぐぅっ!」
それにしても、一体、何が起きたと言うのか?
いや、そんな事より、もっと大切な事、それは。
ここは
彼女の中の『野性の勘』が今、最大級の
考えるのは後だ。とにかく立て、そして、逃げろ。逃げるんだ。
彼女は震える両足を
「ほぉぉ。やはり、獣人と言うのは
場違いなぐらいに緊張感の無い声。
「えっ?」
思わず彼女は、声のした方へと顔を向けた。
するとそこには、黒地に金の
その老人……。
確かに歴史を感じさせる、深い
しかし、
そのアンバランスさ
「お前っ!」
全身の痛みも忘れ、急にその場から飛び
それもそのはず。
彼女に万引きの
「
老人の顔には柔和な笑みが浮かぶ。
しかし、その目の奥には、少女の背筋を凍らせるに十分な
尚も老人からの追撃を恐れ、身構えたまま一歩も動けない少女。
「どうした? まだワシとやり合おうと言うのかのぉ?」
「シャァァァァッ!」
問答無用。
彼女の
盛大に発せられる
「そうは言ってものぉ……」
老人はさも不思議そうにしながら、彼女へと問いかける。
「……ヌシの自慢の
老人は、自分の足元に転がっていた
「えっ?」
投げられた物を受け取ろうと、
――ボトッ
しかし、彼女は
なぜ?
そんな疑問を胸に、足元に転がる
しかし、
「アッ!……ガッ」
声にならない。
それもそのはず。
彼女の足元に転がるのは、黒い
「ギッ! ギャァァァァァァァァッ!」
思わず叫び声を上げつつも、自身の右腕に視線を移す。
すると、そこにあるはずの右腕は、
「グウッ!」
突然、襲い来る
――マズいっ! 逃げろ、逃げろ、逃げるんだっ!
彼女の中の
しかし、
結局は
そんな状態で、この場を去る事など、出来ようはずが無い。
――この老人を
――無理だ。アイツは強いっ! 逃げろっ! お前には絶対無理だっ!
本能が
「うるさい、うるさい、うるさいっ! うわぁぁぁぁっぁぁ!」
全てを断ち切る様に、
すると突然、彼女は地面に転がる自身の右腕を拾い上げると、
何もかもを捨て、覚悟を決めてこの場に来た。
……はずであった。
しかし、まだ十三歳の少女である。
――強い
それに逆らう事など、出来ようはずもない。
薄暗く、日も差し込まない
老人は大槍を小脇に抱えたままで、逃げ去る獣人の後ろ姿を目で追う。
やがて……。
「ストラトス」
「はっ」
「追えっ」
「はっ
「無用。背後を知りたい。あの様な子供が狙うには、アゲロスは大きすぎる。誰かが後ろにいるはずじゃ」
「はっ」
「明日の朝までには宿に戻れ」
「
ストラトスはそう告げると、彼女の後を追う様に駆け出して行った。
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