5
中は確かに薄暗く、そして散らかっていた。
どのぐらい昔の建物かは分からないけど、崩壊していないだけスゴイ。
床も歩いたら踏み抜くこと無い。つまり床板は腐っていないということだ。
…かなり立派な造りなんだろうな。
中に進んでいくけれど、先に行った4人には会わない。
それどころか声や気配すら感じない…。
さすがに2人も気付いたのか、不安そうな顔付きになった。
山の中なだけにケータイは通じず、使えない。
中は薄暗かったけれど、懐中電灯を使えずとも中が見える。
けれど見当たらない。
アタシは2人に、4人を探そうと言い出した。
だけどもしかしたら、どこかに隠れてて、アタシ達を驚かそうとしているのかもしれないと、引きつった顔で言われた。
だから奥へ、奥へ、足を進める。
だんだん暗さが濃くなっていく。
だけど耳に、ふと話し声が聞こえた。
それは先に歩いていた2人の耳にも届いていたらしく、2人は慌てて声のした方へ向かった。
少し怒りながら走っていく2人の後ろ姿を見ながら、アタシは何故か追いかけようという気にはなれなかった。
だって…あの声は、4人の声じゃなかったから…。
そして奥の方からは、2人の足音が途絶えた。
息を飲みながら、アタシは歩いた。
このまま歩いていけば、行き止まりだ。だから右手の廊下に進むしかない。
けれどそこは台所となっていて、誰もいなかった…。
ああ、やっぱり…。
辺りを見回してみたけれど、誰かが隠れていたり、ここにいた形跡は何も無い。
アタシはぐっと奥歯を噛み締め、元来た道を戻り始めた。
…静かだ。
アタシの歩く音しかしない。
誰の気配も無いけれど、何かの存在は感じる。
声は聞こえないけれど、空気は震えている。
そして…アタシを見ている視線に気付く。
けれどその存在に気付いた姿を見せれば、きっと囚われる。
走り出したい、叫び出したい衝動を抑えながら、一歩一歩を踏みしめて歩く。
だけどそろそろ限界かもしれない…。
叫んで、ここから逃げ出したい気持ちが心を占める。
手を組み、胸に当てて必死に堪える。
逃げ出したらダメ。捕まってしまうからダメ。
捕まれば、二度と逃げられない。戻ってこられない。
冷や汗が背中までダラダラ流れる。
足がガクガク震えだした。
目の前がくらっ…と揺れた。
あっ、これはヤバイ、な…。
もう…1人では耐えられない。
がくっと膝が折れるのと同時に、意識が遠のいた。
けれど、両肩を支えられ、意識が戻った。
「えっ…?」
―大丈夫? おねーさん。
―しっかりしろ。こんな所で倒れたら、ただでは済まされないぞ。
あの、2人の少年だった。
「どっどうしてここへ…」
―説明は後でね。それより早く行こう。
―出口はこっちだ。
2人がそれぞれ手を掴んで引っ張るので、アタシは歩き出した。
呆然としながらも、頭が真っ白だった。
それは安心感がどっと訪れたから。
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