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仲間の声が聞こえた。
どうやら1番目に行ったペアが戻って来たらしい。
「あっ、いっけない! そっそれじゃあお菓子、どれが良い?」
慌ててカバンの中を開けて見せるも、2人は仲間を見ている。
―ねぇ、おねーさん。他の人にも会わせてよ。
「えっ? 何で?」
―お菓子、もっと欲しいから!
…輝かんばかりの笑顔で言われても…。
「会わせるのは良いけど…くれるとは限らないわよ?」
正直言って、まだ精神的に幼い人達ばかりだ。
悪い人ではないのだけど…好奇心が強いと言うか…。
―良いから。早く行こうよ。
ぐいっと手を掴まれ、引かれた。
「わっ分かったわよ」
でも…その手はとても冷たかった。
渋々屋敷の入り口に戻ると、仲間は2人の対照的な少年を見て、きょとんとした。
そして案の定、どうしたのかと尋ねてきた。
なので苦笑しながら、お菓子が欲しいのだと説明すると、一気にイヤな顔をされた。
そして次の瞬間、口々に飛び出るのは文句ばかり。
なのでアタシは少年2人の腕を掴み、社の前に戻った。
「やっやっぱりダメだったね。ごっゴメン」
息も切れ切れに、両手を合わせて謝った。
―う~ん。まあ良いよ。ある程度、予想はついていたしね。
ニコニコ顔の少年も、さすがに苦笑している。
「おっお詫びと言ったらなんだけど、アタシの持っているので良かったら、好きなだけ持ってって良いから」
カバンを再び下ろして、中を開く。
―ホント? じゃあ、コレとコレと…
―コレも。あとコレだな。
さっきまで不機嫌だった男の子まで、カバンに手を突っ込んだ。
…おかげでほとんど無くなってしまった。
まっ、いっか。
駅付近には商店街があったし、帰りにそこで買えば。
「じゃっじゃあアタシは戻るわね。キミ達も暗くならないうちに、早く家に帰った方が良いわよ」
―うん。お菓子、ありがとね。おねーさん。
―じゃな。
「うん。じゃあね」
軽くなったカバンを持ち直し、アタシは駆け足で仲間の元へ向かった。
―…おねーさんだけは見逃してあげるよ。
―ああ。アンタだけは、な。
2人の少年の呟きが、風に乗って聞こえたけれど、アタシは振り返らず進んだ。
…この後起こることを知らずに。
仲間達の元へ戻ると、すでに2番目のペアは行ってしまったとのこと。
少々空気が悪くなっていたけれど、それでも10分が経ち、次のペアが行った後は少し雰囲気が柔らかくなった。
でも2番目のペアが戻ってきていない。
そのことを1番目のペアの2人に言うと、中は散らかってはいたが、進もうと思えば奥まで進めるとのこと。
だから奥まで行っているんだろうと言っていた。
この肝試しにはまず、地図が無い。
はじめての所なので、みんないろいろ見て回りたいのかもしれない。
中は薄暗かったが、そんなに怖くなかったと言うのが少しありがたい。
2人とも不気味さはあったけど、今は平気な顔をしていたから…。
やがて10分が経った。
2・3番目のペアが戻って来ていないけれど、アタシ達の順番が来たので、屋敷の中に足を踏み入れた。
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