4

仲間の声が聞こえた。


どうやら1番目に行ったペアが戻って来たらしい。


「あっ、いっけない! そっそれじゃあお菓子、どれが良い?」


慌ててカバンの中を開けて見せるも、2人は仲間を見ている。


―ねぇ、おねーさん。他の人にも会わせてよ。


「えっ? 何で?」


―お菓子、もっと欲しいから!


…輝かんばかりの笑顔で言われても…。


「会わせるのは良いけど…くれるとは限らないわよ?」


正直言って、まだ精神的に幼い人達ばかりだ。


悪い人ではないのだけど…好奇心が強いと言うか…。


―良いから。早く行こうよ。


ぐいっと手を掴まれ、引かれた。


「わっ分かったわよ」


でも…その手はとても冷たかった。


渋々屋敷の入り口に戻ると、仲間は2人の対照的な少年を見て、きょとんとした。


そして案の定、どうしたのかと尋ねてきた。


なので苦笑しながら、お菓子が欲しいのだと説明すると、一気にイヤな顔をされた。


そして次の瞬間、口々に飛び出るのは文句ばかり。


なのでアタシは少年2人の腕を掴み、社の前に戻った。


「やっやっぱりダメだったね。ごっゴメン」


息も切れ切れに、両手を合わせて謝った。


―う~ん。まあ良いよ。ある程度、予想はついていたしね。


ニコニコ顔の少年も、さすがに苦笑している。


「おっお詫びと言ったらなんだけど、アタシの持っているので良かったら、好きなだけ持ってって良いから」


カバンを再び下ろして、中を開く。


―ホント? じゃあ、コレとコレと…


―コレも。あとコレだな。


さっきまで不機嫌だった男の子まで、カバンに手を突っ込んだ。


…おかげでほとんど無くなってしまった。


まっ、いっか。


駅付近には商店街があったし、帰りにそこで買えば。


「じゃっじゃあアタシは戻るわね。キミ達も暗くならないうちに、早く家に帰った方が良いわよ」


―うん。お菓子、ありがとね。おねーさん。


―じゃな。


「うん。じゃあね」


軽くなったカバンを持ち直し、アタシは駆け足で仲間の元へ向かった。


―…おねーさんだけは見逃してあげるよ。


―ああ。アンタだけは、な。


2人の少年の呟きが、風に乗って聞こえたけれど、アタシは振り返らず進んだ。


…この後起こることを知らずに。


仲間達の元へ戻ると、すでに2番目のペアは行ってしまったとのこと。


少々空気が悪くなっていたけれど、それでも10分が経ち、次のペアが行った後は少し雰囲気が柔らかくなった。


でも2番目のペアが戻ってきていない。


そのことを1番目のペアの2人に言うと、中は散らかってはいたが、進もうと思えば奥まで進めるとのこと。


だから奥まで行っているんだろうと言っていた。


この肝試しにはまず、地図が無い。


はじめての所なので、みんないろいろ見て回りたいのかもしれない。


中は薄暗かったが、そんなに怖くなかったと言うのが少しありがたい。


2人とも不気味さはあったけど、今は平気な顔をしていたから…。


やがて10分が経った。


2・3番目のペアが戻って来ていないけれど、アタシ達の順番が来たので、屋敷の中に足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る