5話 復学
あいつとは、また説明しにくい人というもので、簡単に言えば素行不良の生徒である。
名前は斉藤 成美 (さいとう なるみ)。
何故、クラスの空気が凍るほど嫌われているかというと、ゴールデンウィーク明けに校内で暴力事件を起こし、1ヶ月の停学を受けていたからだ。しかし停学期間を終えても復帰せず不登校だったため、皆は少し気が緩んでいたのかもしれない。
それと俺の通ってる高校は自称進学校で偏差値は高い方だと思う。俺も皆、もちろん斉藤も受かるには努力したと思っている。
「荒島ー、それまじー?」
クラス1人が嫌そうな顔をしながら荒島に質問する。
「まじまじ、昨日あいつが応接室に親と来てた…っておい、山中さんよ、マインワンキルはひでーよ。」
「ごめーん、手が滑ったー」
それはそれで登校するとは限らないと思うのだが、クラスの人数減ったら嫌だし、まぁいいだろう。そんな呑気な事を考えていた。
校内にチャイムが鳴り響く。
8時半の始業で、荒島たちはゲームを片付け、それぞれの席へ戻って行った。
教室の扉が開き、入ってきたのは担任と荒島の言う通りに"アイツ"だった。
一応言っておくが、俺は斉藤とは仲良くはない。席は窓側の1番後ろの特等席だが、お察しがいい人は分かるだろうが、右隣が斉藤 成美なのである。
斉藤が席に着いたと同時に、担任が口を開く。
「今日から停学復帰になって、また皆と勉強する事になったからなー、それと…」
そんな軽めの挨拶がHRの始まりとなった。
いつものHRと同じ、授業の連絡事項等を話して終わる。
「お前ら、3時間目の体育は校庭になったから忘れるなよ、じゃ委員長よろしく。」
おはようございますと、HRが終わりを告げ、皆1時間目の準備を始める。
授業のペースは割と早い。追いつけない程度ではないが、気を抜いてられないのが難点であり、1時間で体力を結構削られてしまう。
隣で話し声が聞こえて、振り向くと、
「教科書ないから見せてくれない?」
と斉藤が俺は反対の奴に頼んでいたが、そいつは斉藤の事を無視している。
当然と言えば当然。皆悪い評判は受けたくないものだ。停学してた奴と仲が良いと教師陣に思われたくないのだろう。
よく考えてみれば、教科書忘れたなら教師に言えば貸してもらえるが、それをしない斉藤は何かあったのだろうか。
そんな事を考えていたら黒板は随分と先に行っていた。
4時間目が終わり、昼飯の準備をしていると荒島と山中が俺の席に来て、
「購買行くけどお前もくるか?」
一瞬、いつものように財布片手に立とうとしてしまったが、
「悪い、今日弁当ある。」
たまにというか週3で弁当を作っているため、皆は疑問に持たないだろう。
この弁当が、中学生に作ってもらったということを…
と内心喜びながら、弁当の蓋を開けると、冷蔵庫の余り物で作ったとは思えない出来栄えのものだった。
「それ、お前作ってないだろ。」
と、急に話しかけられ驚きと共に、声の主の方へと顔を向ける。
斉藤が俺の弁当を見ていた。
「なんだ、文句つけて貰う気か?」
「いらないわ、私も弁当あるし」
一瞬焦ってしまったが、落ち着いて受け答えた。勘が鋭いとでも言うのか、と考えていたら、彼女は弁当片手に教室を後にした。
昼過ぎの授業は睡魔に襲われるも、何とか乗り越えその日の学校が終わり、次はバイトと多少なりと憂鬱になりながら、自転車を家の駐輪場に置いて、徒歩でバイト先へ向かう。
ある日、少女拾いました N @YugudoRa
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