2話 日常から非日常へ

大雨の中、なぜか少女を拾って帰るという非日常にも程がある事件が自分の中で起きていた。



「起きろー、朝だぞー(大嘘)」


と肩を揺すったり、声を掛けてみるも全く起きる気配がない。

しばらくすれば起きるだろうと、着替えがあるか確認しようと思ったので、


「着替え持ってるかなぁ…

悪いけどリュックの中見せてもらうよ…」


雨で濡れているリュックのチャックを開け、中を覗いた。

まず目に入ったのはコンビニ袋に入ったノート。

ノートをリュックから取り出し、脇に置いて更に中を覗くと、筆箱や財布にTシャツ、半ズボン1枚と丸めてあるパンツが入っていた。


「着替えはあった…けどこれなんだ?」


とビニール袋に入ったノートを手に取り、

袋から出した。


"コ〇ヨのA4罫線ノート"


表紙には何も書いてない。

1ページ目にめくると、そこに書いてあったのは…

"男2人の描かれた絵"


「ok...落ち着こう。まだ慌てる時間じゃない。」


と、これ以上覗いてはいけないと第7感?がビンビンしている。

ノートを閉じて、袋に戻しておこう…

とりあえずトイレにいくか。戻ってから考えるとしよう…


「あの女の子はBLが趣味なのか…」


女の子が起きた時どんな言い訳をするか…

言い訳じゃだめだ、誘拐になってしまう。

どう説明すればいいんだ…


そんな余計なことを考えながら、用を足しトイレから出ると、目に入ったのはソファーの背もたれから少し飛び出た、黒い物体。というか頭である。


「あ、起きてる。」


と、近寄り顔を覗こうとしたら、さっき覗いたノートを手に持っていた。この瞬間に頭の中で、あの絵が浮かんと同時に少女が


「中身、見たんですか…?」


と顔をこちらに向けたが、向ききる前に目をそらしてしまった。

とても、男2人が描いてあったとは言えない。


「見たんですね…それに私の服まで…」


まて、服は仕方ないだろと思いつつ、体調を崩されても困る。看病できない訳じゃないが理性を保てないような感じがする。


「とりあえず風呂はいってきな、風邪ひいちゃうから。」


と、風呂場の方を指さして少女の顔を見たが、これが失敗だった。


「うぅ…」


泣かしてしまった、これは俺が悪いのかと思いながら、泣き止むのを待つ。


「ごめんな、傷つけちゃったか?」


「い、いえ…悲しくて泣いてるわけじゃないんです。助けてくれてありがとうございます。」


と、少女は吐露しながら話をしてくれた。



あの後、少女を風呂へ入れ、その間に来ていた服を洗濯に、聞いたところ何も食べてないらしく、カップ麺で済ますつもりだったが冷蔵庫の余り物で料理を作る。


「えと、冷蔵庫にあるのは…」


コーヒー、卵4つ、納豆2パック、冷凍唐揚げetc...


「明日の弁当の分使っちゃうか…」


冷蔵庫から冷凍唐揚げと卵をとり、電子レンジに唐揚げを入れてスイッチを押し、温めている間に卵焼きの下ごしらえを始めた。


「今日に限ってご飯3合炊いたのは何故だ…」


と、運命かと感じていると、『チン』と言う音が響いたと同時に洗面所から、少女が出てきた。


「お、上がったか、服は置いて…ふぁ!?」


少女の姿を2度見してしまった。

リュックの中にあった着替えを置いておいたはずなのに、着ていたのは俺のシャツだった


「すみません、置いてもらってた服濡れてたので…」


あ、濡れてたのね着替え、気づかなかったよ…

ん?濡れてたってことは、俺のシャツのみ…?


「パンツ貸して貰えませんか…下がスースーするので…」


説明しないで、俺の脳内が花畑になってしまう。それを意味するのは理性の決壊である。


「今出すから待ってて。」


と卵をといて牛乳を入れた所で洗面所の引き出しからパンツを出して渡し、少女の着替えも洗濯機に入れて放置。


「ご飯出来るまでテレビでも見てて」


「分かりました、ありがとうございます」


と少女はソファーに座り、テレビを見始めた。俺は料理を再開する。

この間会話はなく、黙々と作業し卵焼きを完成させ、ご飯と唐揚げを皿にだし、ソファーの前のコタツに持っていく。


「出来たから食べて、味は保証しない。」


と少女に箸を渡し、卵焼きも持ってきた。

そして名前を聞いてなかったことに気づき、聞いてみた。


「俺の名前は一麻、三条一麻(さんじょうかずま) 君は?」


「宮下紅音(みやしたあかね)です。」


名前を聞くと共に、ずっと引っ掛かってた事をきいた。


「よろしくね、紅音ちゃん。ところでなんだけど、何で家に帰らないの?」


数秒の間の沈黙の後に、紅音が口を開いた。


「少し話が長くなります。」

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