ある日、少女拾いました

N

1話 ある日の夜

俺は少女を拾った




とある日の夜、バイト終わりの雨の中帰路についていた。そして傘を忘れたため走っていた。


「畜生、こんな日に雨降るなんて聞いてない。」


こんな日といっても、バイトが普段とは違いタイムカードを退勤処理するのに30分遅くなっただけである。


いつも帰り際に寄るコンビニに到着し、髪についている水滴を、バッグの中からタオルを取り出し拭きながら入店する。

店内で夕飯のカップ麺とコーヒー、ビニール傘を買い、店を後にした。


コンビニから家まで約200m位で、焦る必要も無くなったので歩いていた。


雨が更に強まる中、目の前でサラリーマンとリュックを背負った少女がぶつかり、少女が倒れた。サラリーマンは1度振り返って、そのまま無視をして走り去って行った。


「うわ、ひでーやつやな…」


こっちも現場を見た以上、放置する事もできず、未だに起き上がらない少女を見て、少し焦りを感じ始めた。

少女の元に駆け寄り、声をかける。


「大丈夫かー?」


と肩を揺すると、


「ごめんなさい…大丈夫です。」


返事が帰ってきた。とても今にも消え入りそうな声でだ。

けれど、起き上がろうとする様子が伺えないため、


「寝たままだと汚いから、起こすよ。」


と一声かけて、少女を起こし座らせた。

雨で地面が濡れてるから可哀想ではあったが、仕方ない。


「傘もささないでどうしたの?家まで送ろうか?」


普段、女性と会話することが苦手な自分がこの時、こんな言葉がスラスラと言える自分に驚きながら、少女がこう答えた。


「お家ない…」



そこからは大変だったが、おんぶの状態で少女を担ぎ、傘をさしながら帰路に戻った。


家に着くとまずオートロックを開けなければいけないのだが、両手が塞がっていたため、一旦少女を下ろしオートロックを開けた。

下ろした少女をよく見ると寝息を立てている。


「人が苦労してるのに寝るか…」


また荷物を持ち少女を持ち上げた時、悲劇は起きた。


"オートロックの自動ドアが閉じてしまった"


半ばイラつきながら、もう一度オートロックを解除し、閉まらないようバッグを自動ドアに立て掛け、少女をまた背負い、バッグを回収しエレベーターに乗る。


4階に着いた後、先程の誤算を少し学習し鍵を持った状態でいたため、鍵を開け、家にやっとの思いで入った。


リビングのソファーに少女を寝かせ、先に自分の着替えを済まし、ここである問題に気づいた。


「着替えどーすりゃええんだ?」


着替えさせないのも風邪をひいてしまうし、俺が着替えさせるのも気が引ける。


「起こすか。」


と、少女をまた揺すり眠りから覚まさせようとする。。。

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