3話 中学生、宮下紅音
私の家は裕福とは言えませんでした。
両親はいつも喧嘩ばかり、父はパチンコへ給料を溶かし、母はとある宗教にのめり込んでしまっていました。
そんな日常を過ごしていたのが小学生時代、なんとか両親に仲良くなって欲しいと勉強を頑張ってきました。
けど、興味を持って貰えませんでした。
結婚記念日にお小遣いを使ってケーキをプレゼントした事もありました。無駄遣いするなと怒られましたけど…
中学2年生になった頃、両親の仲は最悪になり殆ど別居状態でした。定期考査が終わった次の日に離婚してしまいました…
私は母に引き取られ、引越しました。そして母はもっと宗教に入り込んでしまったんです。
ある日、母が
「お母さんたちが救われるにはこれしかないの」
と私を、その宗教団体の幹部らしき男に売られかけました。襲われそうになった私は近くにあった目覚まし時計で男を殴ってしまったんです。
その件もあり、それから母は家を出て行き帰ってくる事は無かったです
バイトも出来ない私は家賃を払う事が出来ず、家を出るしかありませんでした。
「そして先程のことになる訳です…」
思いの外、重すぎる話で同情もクソもないのだが、とりあえず事情は知れた。
「今日は泊まるとして、明日からどうするの?」
「…どうしましょう…」
「親戚か父親に連絡出来ないの?」
「親戚は居ないです。父はもうどこにいるのかもわからないです。」
八方塞がりじゃないかぁ…(困惑)
施設に連れていくしかないかなと、これからの事を考えていたら、
「無理を承知で頼みますが、ここで住まわせて貰えませんか?
もちろん身の回りの事はやりますから…」
俺が明日施設に連れてくか、お金を幾ら渡せばいいか等を考えてた時に、このぶっ飛んだ頼み事に吹いてしまった。自分で思うが汚い。
「すまん、その理由を教えて貰ってもいいかな?」
「私、今まで誰かに助けて貰った事が無くて、こんなに嬉しいと思った事が無かったんです。せめてもの恩返しと…」
俺が仕事をしていて、養えればと思ったが未成年は捕まります。御用です、ありがとうございました。
それは置いといて、
「俺が襲ったらどうするの?」
実際、俺みたいな骨なしチキンがそんなこと出来るはずも無いが念の為だ。
「それは仕方ない事だと思います…
嫌だと言うのなら、明日出て行きます。」
卑怯な質問をしたと少し後悔。
後である人に電話しなきゃならんのかと思うと憂鬱になりそうだ。
「分かった、けど少しの間だけだよ。」
「ありがとうございます…」
と、突如少女と同居する事になった高校生なのであった。
終わらすでない。まだ終われない。
時計はてっぺんを回りかけていた。
「とりあえず寝るか、紅音ちゃんは俺のベッド使って、俺はソファーで寝るから。」
「分かりました、けど…」
「けど?」
「ソファー、かなり濡れてますよ。」
その日は仕方なく床で寝ることになったのは、言うまでもなかった。
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