電子百々目鬼

音楽や映画、ゲーム、電子書籍などのデジタルコンテンツにおいては、著作権保護のための様々な手段がとられてきました。複製した場合に観るに堪えないノイズが現れる信号を仕込む、再生の際に購入時に発行されるライセンスキーを要求するなどが一例です。


中でも導入の際に物議を醸したのが「電子百々目鬼」です。百々目鬼というのは日本古来の妖怪で、銭を盗んだ人間に憑依し、目の姿となって現れる習性があります。ある古文書では、盗癖のある女の腕を一面眼球だらけにしてしまったと言われています。


その百々目鬼を電子化し、デジタルコンテンツに仕込んでおくのが電子百々目鬼です。権利者の許諾なく複製・アップロードされたコンテンツをダウンロードすると、仕込まれていた百々目鬼がユーザーに憑依する仕組みになっています。


この妖怪が含まれる違法コンテンツをダウンロードしたユーザーの身体には、一ファイルにつき一つの眼球がどこかに出現します。ダウンロードすればするほど、身体じゅうが眼球だらけになっていくのです。この眼球は海賊版ユーザーに心理的な負担を与えるだけでなく、裁判において違法ダウンロードの証拠にもなるとして注目されました。


この電子百々目鬼ですが、導入から僅か半年で廃止されることとなりました。


違法アップロードされたファイルと知らずにダウンロードした子どもが眼球を友達に見られていじめに遭う可能性や、健康面での不安が問題視されたのです。妖怪の入った電子ファイル自体が不気味という意見もありました。


短い期間で姿を消した電子百々目鬼ですが、広いネットの中には、今もなおこの妖怪が仕組まれたファイルが流通しているかもしれません。海賊版コンテンツを頻繁に利用している人は、自分の身体を一度よく見てみた方が良いでしょう。

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