第2話招かれる脇役
「ようこそ。ここは遺失物管理室です。決まりごとですので、一応お聞きします。明かすことが出来るのであれば、お名前を。そして、あなたのお探しものを教えてください」
立ち上がり、礼儀正しく礼を返し、カウンターの椅子へと案内する睦月。その指示に従いながら、老婆はゆっくりと歩を進めていた。
「どうぞおかけください」
見計らったように同時に腰を掛ける老婆と睦月。
その様子を、葉月は食い入るように見つめていた。
ほんの一拍の空白の時間。だが、老婆の言葉がそれを埋める。
「お察しの通り、名乗ることはできません。ただ、正直爺さんの妻といえばお分かりかと思います」
ゆっくりと自らを明かす老婆。自らを正直爺さんの妻だと名乗るその言葉に、葉月が驚きの声を上げて立ち上がる。
「葉月さん。失礼ですよ」
その瞬間、睦月の鋭い声に体をこわばらせた葉月。だが、その意味を瞬時に理解すると、謝罪の言葉を老婆に告げていた。
にこやかにそれを返す老婆。
だが、謝罪した後にもかかわらず、葉月は老婆を凝視し続けている。小さく『自首? いやいや、ここはそういうのじゃないから』とつぶやきながら。
「葉月さん……。あなたにはいろいろ後で――」
「いいですよ。多分、あの人がここに何度も足を運んでいるのは知っていますから……。ただ、私はここに自分で来ることはできない身なので……。こうして呼んで頂いて感謝しています」
深々と頭を下げる老婆の姿に、葉月も思わず両手で自らの口をふさいでいた。
「僕は許可しただけです。あなたに探し物がなければ、ここには来られません。一応役目ですのでお聞きします。あなたの失った者はなんですか?」
「ええ、私が探している者は――」
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