第6話 カールの思惑
その女性は、黒いタイトスカートに白いブラウス、金髪の髪には金の髪留めが留めてあ
り、後ろでアップにしていた。
首には銀のネックレス。それは月の形をしていた。
真っ赤な口紅をした彼女はにっこり笑うと軽い会釈をし、ジャンとポールを黒いソファーに招き入れた。
それから、自分はコーヒーを入れるために、秘書室に戻っていった。
パメラにソファーに座ることを即された彼らは、戸惑いながらもそのソファーに座った。
それからしばらくすると、パメラがコーヒーを客用の花柄のカップとソーサーに入れて、トレーに乗せて持ってきた。
キリマンジャロの美味しそうな香りが部屋に立ち込めると、パメラは4つのコーヒーを、まずジャンの元に置き、次にポール。そして社長のカールの元において、最後に自分のところにおいて、カールの隣へと座った。
ジャンはパメラが奇麗だと思った。
黒いタイトスカートに赤い口紅がよく似合う。
「さて・・・今日来てもらったのは・・・」
カールが話を始めた。
「ジャン。ユナイテッドに入りたいというのは本当かね?」
カールがガラスの透明な灰皿にタバコを置きながら言った。
煙草の煙が辺りをくゆらせる。
「はい…。」
ジャンがゆっくりと、しかし緊張しながら言った。
「何故ユナイテッドに?」
カールが話す。
「ここから先は私に話させてください。社長。」
ポールがカールに向かって言った。
「わかった。話を聞こう・・・。」
彼は煙草を持ちながらポールのほうを向いた。
「ジャンは・・・ジャン・ハザウェイは、最初はバンドの中で異彩を放っていました。ベーシストとして。しかし後から入ってきたジェイニー・レインにすっかりバンドを乗っ取られ、ジャンは孤立をしてしまいました。バンドが大きくなるたび、ジャンの居場所はなくなり、ジャンはついにあることを決行しました。それがこれです。」
そういうと、ポールは自分の黒いカバンから、『シャイニングレイ』のファーストシングルになる、『ロサンゼルスの葛藤』の譜面のコピーを取り出した。
そして、それを、ツ・・・とテーブルの上に置いた。
「これは・・・?」
カールが聞いた。
「ジャンのバンドの、『シャイニングレイ』が第一弾シングルとして出そうとしていた『ロサンゼルスの葛藤』です。その譜面のコピーをジャンが持ってきました。」
ポールは社長のカールにあることないことを話し続けた。それを横で聞きながら、ジャンは只黙っていた。違う。こんなんじゃないのに。
確かにジェイニーとクリスのことは憎かった。
でもジェイニーがバンドを乗っ取るなんてそんなことは1度もなかった。
デトロイトから帰ってきたときにも、ジェイニーはバンドのために貢献し、『デトロイトロックシティの残り香』を書きあげた。
その他にもいくつもバンドに貢献していた。
いくつも曲を書いて書きまくって、まるで何かにとりつかれたように・・・。
「ジャン!!」
その時、ポールの怒鳴り声が聞こえた。
ジャンははっとして我に返った。
「何ボーっとしているんだよ。社長の前だぞ!」
ジャンは慌てた。
俺、何ジェイニーとクリスをかばうようなことを・・・考えていたんだ?
ポールが冷静になった。
そして言った。
「社長が、お前に話したいことがあるそうだ。」
「はい・・・。」
ジャンはゴクンと生唾を飲み込むと、カールの話を聞く姿勢になった。
「ジャン。君はユナイテッドに入りたいと言って居たね。」
「はい。」
「それでは、我々に誠意を見せて欲しい。」
「誠意とは・・・?」
ジャンが聞く。
「どんな手を使ってもいいから、この譜面が欲しい。そうすれば君をユナイッテッドに招き入れよう。」
「どんな手とは・・・?」
「君も大体分かっているんじゃないか?」
それは・・・クリスとジェイニーを危ない目に合わせることだと直感した。
ジャンは暫く考えて居たが、社長から目を反らすと、
「少し・・・考えさせてください・・・。」
と、口にした。
カールはにわかに眉をひそめたが、また笑顔になりこういった。
「そうだね、裏切ったとはいえ、前は仲間だったんだからね。そんな簡単に了承は出来ないだろう。あとは、ポールとよく相談して決めるんだね。」
「はい・・・。」
ジャンとポールはそう言って立ち上がり、社長室を後にしたが、一番納得のいかない人物が居た。
それは、ジャンの恋人のポール・ショーティノだった。
ポールはジャンが1も2もなく引き受けると思って居た。
しかし、彼にはまだ前のバンドに対する淡い思いがあった。
ポールは裏切られたような気がしたのだ。
部屋に入ると、ポールはジャンを無理やり犯し始めた。
「何をするんだ!ポール!」
「うるさい!社長の前で恥をかかせやがって!お仕置きだっ!!」
そう言うと、ポールはジャンの服を無理やりはぎ取り始めた。
Tシャツ・・・Gパン・・・そして黒のブリーフ1枚になったジャンは、また、ポールが気持ちよくしてくれるのではないかと期待していた。
ポールはジャンに手錠をはめ始めると、今日は足にも手錠をはめた。
そして、ブリーフをふくらはぎまで無理やり降ろした。
途端にジャンの股間があらわになり、それは勃起していた。
「こんな状態なのに、それでも勃起するなんて、お前は本当にスケベな奴だ。」
吐き捨てる様にポールが言うと、ジャンは恥ずかしくなった。
それから、ポールは、暫くジャンの勃起したものを見つめて居たが、何を思ったか、ポールは白い蝋燭に火を灯し始めた。
「・・・!!ポール!!」
「ジャン・・・俺の言うことは絶対だ。何故クリスとジェイニーをかばう?」
「かばうだなんて・・・そんな・・・俺は別に・・・。」
すると間髪入れずに、ポールがジャンの足に蝋燭を垂らした
「うっ!!」
ジュウ・・・と言って蝋は、ジャンの足に垂れた。
「あっ・・・ああっ!!・・・」
仰け反るジャン。
目には涙がいっぱい溜まっていた。
「ひどいよポール。何故こんなことっ・・・!!」
「いいか!?ジャン。俺の命令は絶対だ。クリスを殺して譜面を取るんだ!」
「そんなこと出来ないっ!いくらあなたが好きでも、クリスを殺すなんて!俺を犯罪者にするつもりかっ!?」
「カールなら・・・」
ポールがかつてないほど、冷たい目をした。
「後始末はきちんとしてくれるさ。」
ゾクッ!・・・と狂気に満ちた殺気を感じたジャン。
この人は俺のことなど愛して居ない。
愛して居るのは自分だけ。
そうだったんだ。
なのに俺は・・・こんな状態になっても、この人のことを信じてしまう。
愛してしまう。
もう、シャイニングレイには戻れない。
俺が、ちょっとの刺激を求めたせいでこんなことになるなんて!
「言うことが聞けないならっ!!」
今度はポールは、ジャンの股間に向けて蝋燭を垂らす体制に入った。
「や・・・やめて・・・ポール・・・」
「クリスとジェイニーを殺すか?俺のことを愛して居るなら・・・?」
そして・・・
蝋燭の蝋が一滴垂れた・・・。
「ひいいいいいいっ・・・!!」
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