第5話 料理
「母さん、じゃあ・・・」
「ええ、母さんやお父さんも、触れたくなかったし、
あんたも、傷つくと思って内緒にしてたんだけど・・・」
母さんの話は、昨日の姉と名乗る女の子の言った事と、全て一致した。
双子だったこと、事前に男女とわかっていたこと、そして、一美と正と命名する積りだった事・・・
生まれてすぐに姉の方が他界した事・・・
「でも、あんた何で・・・」
「いやいいんだ・・・じゃあ」
俺は電話を切った。
あの人の言っていた事は、間違いないようだ・・・
「この世が見たくて、やってきた」
そうらしいが、両親には知らせないほうがいいだろう。
なるべく気にしないようにしているのだが、やはり気になる。
「だめだ、公私の区別はしっかりと・・・」
そう言い聞かせたが、やはり、無理・・・
問題は、大家さん。
あの人から、両親に連絡が行かなければいいが・・・
口止めしても、多分、無駄だし・・・
俺は、その日は早々に仕事を切り上げ帰宅した。
ドアノブに手をやる。
鍵がかかってる。
「よかった。約束は守ってくれたみたいだな」
ノブを回して、部屋に入る。
「ただいま」
「お帰り」
入った瞬間に、俺はこけた。
悪い予感が的中。
大家さんがいた。
「あら、正一くん、お仕事お疲れ様」
大家さんの声にこける。
いかに大家さんと言っても、勝手に人の部屋に・・・
「私が入ってもらったの、正一くん」
姉と名乗る女の子がそこにいた。
「ねえ、いいかげん。お姉ちゃんと呼んでよ。正一くん」
「いきなり、言えません」
その後、大家さんから、予想していた言葉が出た。
「そうだ、この事ご両親に連絡しないと」
「あっ、いいです。いいです。後で僕がしますんで・・・」
「そう、でも・・・」
説得に、20分かかった。
「わかったわ。じぁあ。姉弟仲良くね」
「どうも・・・」
たく・・・
なんで、女ってのは、おしゃべりが好きなんだ。
「で、お姉さん、何で大家さんを」
「ご飯の作り方」
「あの世で、覚えてきたんでしょ?」
「私が覚えてきたのは、存在。レシピまでは、教わってないよ」
「で、作れるんですか?」
「ええ、私は体はあるもん。ほら・・・」
お姉さんが、僕の手を握る。
確かに、霊ではない。
それに、温かい・・・
「じゃあ、今日は私が作るからね」
「うわーいいです。いいです。僕がやりますんで・・・」
「だーめ。お姉ちゃんの言う事ききなさい」
とりあえずは、引きさがった。
芸術的な料理が出てくるのは、間違いない。
でも、鍋とか爆発させないか・・・?
程なくして、料理が運ばれて来た。
予想通りだった。
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