第7話 的なヤツ ただ死んだ後

「…みんな寝ないの?私は眠くないみたいだけど」

 午前3時。昼の13時半に始まり、半日が経過している。

 寝たらそれだけ時間はなくなる。

 36時間でなくともそうだけれど、36時間だけしかない中で。

 36時間起き続けるなんて凄いことでも何でもない。

 できる!寝ない!

 だって

 起きてお母さんがいなかったら?

 …

 思い当ってしまった。

 これさ、夢だったらどうする?寝ちゃうことで逆に終わっちゃう的なヤツ。

 起きたらあー何か夢みたなあとか思った後どんどん忘れて、お母さんはただ死んだ後でここ病院かとか、それかもう少し先のお葬式の読経の途中に寝ちゃってる私、とか。


「そうだ!お母さん、私の喪服どこ?前の着れるかな?何年前かな?」

「おねえ…それ後で…」

 弟が言いかけたが、父も自分の喪服が何処にしまってあるか知らないのだろう。何か言いたげに顔を上げる。

「そうね、おとうのも出しておくわね」

「ああ…お願い」

 コーコーセーはセーフクでいいからいいよな。と思いつつ、お母さんが黒いワンピースにアイロンをかけてくれるのが嬉しい。


 36時間起き続けるなんて凄いことでも何でもない、

(でもその前から起きてるもんなあ)

 と思ったとたん何かに負けた。

 防虫剤の匂い、スチームアイロンの蒸気。

 すとんと眠りに落ちた。みたいだ。

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