ココロにしてハート
自分のココロのままに、進路を決める。
わたしは恵当が白猫を見た、わたしの地元の氏神さまを訪れた。
市で一番大きな神社で、新車のお祓いやら七五三やらで年中参拝者が絶えない、繁盛しておられる神さまだ。
年末押し迫っているこの時期は年越の
「猫の毛づくろいみたい」
残念ながら恵当の言っていた白猫ちゃんには会えなかったけれども、わたしは大勢の参拝者たちと一緒に、大祓を神前で受けた。
なけなしのアルバイト代からご祈祷のお金を納め、宮司さんに先導されて茅の輪くぐりをした。
集団でのお祓いが終わった後、わたしは社殿の中に残り、赤い敷布の上で正座したまましばらく自分に問うていた。
『わたしのココロって・・・?』
今までこういうことを突き詰めてやらずに、いろんな物事を決めてきてたような気がする。
結果オーライのこともあれば、明らかに自分にも他者にもマイナスを与えたような決断もあったと思う。
たとえば南条とのことみたいに。
「ご熱心にお参りされてますね」
宮司さんから声を掛けられた。
「すみません。もう帰ります」
「いえ、よろしいんですよ。もし差し支えなければ、あなたの
「志・・・」
「そうです。あなたの人生の目標、といいますか。大きな
「あ」
そうだ。そうなんだ。
「あの、わたしは受験生で、どの大学へ行ってどんな進路を選択すればよいか、ってことばかり考えてました」
「ふむ」
「でも、今の宮司さんの言葉で思い出しました。わたしの人生の志は、エンターテイメントで人を救うことです!」
「エンターテイメント・・・人を喜ばせるもの、ということですね。あなたは、何を?」
「ピアノを弾き、小説を書きます」
「素晴らしい」
「でも、本当にココロの底からの志はそれだけじゃないんです。音楽や小説といった形にとらわれずに、何か人を根っこから救う、そういうエンターテイメントを作り上げたいんです!」
「その志が本当の心からのものならば、神様はそれを掬い上げてくださるでしょう。今一度、わたしも祈願させていただきます。あなた、お名前は?」
「嶺紗。
宮司さんは居住まいを正して、神前に向き直った。
「町東 嶺紗の大なる志を何卒聞き届けたまえ。畏み畏み申す」
わたしは、胸の高鳴りを抑えられなかった。
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