恋文にして恋の歌〜form少年to少女
嶺紗さま
中学校の教室で嶺紗から手紙を渡された時、別れの手紙だと覚悟しました。
けれども読んだ瞬間、大慌てでバッグにしまいました。
誰にも見られないように。
僕があの時、キスできなかったのは、まだ自信がなかったからです。
本当に僕は嶺紗に対する責任を果たせるのか。
もし嶺紗がこのあと僕じゃなくて別の誰かと人生を歩んでいくことになったとしたら、僕は自分がキスしたことの責任を、嶺紗と嶺紗の相手に対して負えるのか。
もし、嶺紗たちに子供ができたら、その子供に対しても、僕は責任を終えるのか。
本当のことを言います。
あの時、嶺紗をぎゅっと抱きしめたかった。
抱きしめて、僕の方からキスしたかった。
嶺紗の髪のシャンプーの匂いを感じながら。
もっと白状すると、キス以上のことを想像してしまう時もあります。
夏に水着で料理を作ってくれた時の姿が忘れられません。
それから、質問に答えます。
僕の眼に映る嶺紗は、嶺紗自身がこうありたいと思う嶺紗です。
僕の思い通りになる嶺紗ならば、それは本意でないし、恋のときめきが半減してしまいます。
あの合唱コンクールで心の底から自分を表現しきっていた嶺紗。
自分の意思でやりたいことをやる嶺紗。
そして、僕は知っています。
あなたは自分のやりたいことが、結果的に誰かを幸せにできる、そういう女性です。
嶺紗。
僕はあなたが、本当に好きです。
結婚したい、って思っています。
有塚 恵当
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