恋文にして恋の歌〜from少女to少年

 恥ずかしいのでレポート用紙と水性ボールペンを使った。

 できるだけ丁寧に書いたつもりだ。

 どうすればわたしの心を表現できるか、時折語彙をスマホで調べながら書いた。


 わたしから恵当けいとへのラブレター。

 以下全文。


恵当さま


 土曜日はごめんね。

 おでこにキスした時みたいなわけにはやっぱりいかないんだね。


 あなたがわたしの家のキッチンに、わたしと2人だけでいる。

 どうしてかその瞬間がもう二度と戻らない時間のような気がして。


 それと、本音を言うね。


 わたしは恵当が好きで好きでたまりません。

 小説を書くためだったはずなのに、どうしてこんなに好きになったのか、自分でもわかりません。


 恵当が側に居てくれて、南条から助けてくれたり、一緒に大阪に行ってくれたり、それから父のために大人に立ち向かってくれたり。


 これ以上ないぐらいに、彼女として大切にしてもらっているのに、それでもまだわたしのあなたへの想いが収まらない。


 わたしは恵当になりたい。

 恵当になって、恵当のこと、全部知りたい。


 ねえ、恵当?

 毎日何時にお風呂に入るの?

 ご両親とはどんな会話を?

 あんなに速く本が読めるのって、どんな感覚?


 でも、本当に知りたいのは。


 恵当の眼に映るわたしは、どんなわたしなの?


 キスすれば、全部わかると思った。

 わたしはあなたになれると思った。


 ごめんなさい。

 許して。


 もし恵当が望まないのなら、ずっと一生キスできなくてもいい。

 それでも、あなたと一緒にいたい。


 恵当。

 わたしはほんとにあなたが好き。

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