男女4人創作論にして人生論
若い男女が集まって創作バナシをする。
まあ、真面目だな、と我ながら思う。
「この中で既に活躍してるのはさきだよね」
「うーん。
「え。そうなんですか!?」
「準グランプリだから。書籍化もされないし賞金もないよ」
沙里さんが漫画投稿サイトのコンテストで準グランプリだったなんて。
「沙里さん。それなのに教授は『プロになれない』なんて言うんですか?」
「
「でも」
「ねえ。恵当くんはどうなりたいの?」
「僕、ですか?」
「今朝からずっと一緒にいて恵当くんがものすごく才気あふれる男の子だってのはよく分かったわ。部活でも頑張ってるみたいだし」
「沙里さん、ありがとうございます」
「だからこそ、どうなりたいの? 部活に読書におまけにピアノに。方向さえ間違えなければあなたは凄いことになると思う」
「嶺紗の彼氏、というのが僕の唯一絶対の属性です」
え。
え。
わお。
「ちょちょっと、恵当! う、嬉しいんだけど、でもその・・・」
「す、すごいね、恵当くん。教授もそんなこと言ってくれたらなあ」
「おー、恵当くんっ! なんて可憐な中1なんだ、キミはっ!」
「さきさん、可憐て言われても嬉しくないです」
いやいやいや、恵当! 精神が可憐だよ。やっぱりわたしの彼氏だけのことはある!
「でも、そうだよね」
沙里さんが女の子の表情でうっとりと語る。
「だって、先生から頂いたモノクロの写真。それを元に書いてる漫画の主人公。彼女だって、生きて、恋してるんだから」
「わたしも沙里さんから頂いた恵当とわたしのイラスト、本当に自分たちの分身のように思ってます」
「え? 僕と嶺紗のイラスト?」
「あ!」
「嶺紗ちゃん、いいよ。恵当くんに見せてあげて」
こういう形で沙里さんのお許しが出た。わたしは密かにスマホの待ち受けにしている沙里さんが描いたわたしたちのイラストを恵当に見せる。
「わ。嶺紗・・・きれい・・・!」
「ははは。沙里さん、美化しすぎ」
「ううん、違うわ」
沙里さんはわたしの謙遜を遮った。
「わたしは夏のこの短い期間でのあなたとのやりとりから嶺紗ちゃんという人間がよく分かったの。わたしはあなたの内面の美までを表現し尽くしたつもりよ」
嬉しすぎて、言葉が出ない。
代わりに恵当が言う。
「沙里さん、僕の嶺紗のためにありがとうございます」
「くーーーっ、羨ましいぞーっ!」
さきさんが突然タオルケットの上でバタバタとクロールし始めた。
「恵当くん、嶺紗ちゃん、キミらは良い! わたしもキミらをテーマに1曲ぶちかましたい気分だよ!」
「あ、ならさ、さき」
沙里さんが、すくっ、と起き上がって胡座をかいた。
「わたしの描いたイラストとさきの作った曲で動画撮らない? それで嶺紗ちゃんが今書いてる小説のプロモに使ったらどうかな」
「沙里。どうせならアニメコースに頼んでアニメにしちゃえ! となると嶺紗ちゃん」
「は、はい」
「WEB小説コンテスト、グランプリ獲りなよ!」
恵当は起き上がって正座する。
「あの・・・僕は何をすれば」
「嶺紗ちゃんを愛してあげて」
沙里さんが、とても真面目な表情で恵当に言った。
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