勉強も運動もできて吹奏楽部で、しかもイケメン。そんな完璧と呼んで差し支えない幼馴染の彼にはある欠点がありました。それは、どうしようもない味覚音痴だということ。
お洒落にズボラな主人公は、彼を異性として意識しながらもこれまで友達としての距離を保ち続けていました。ですが……迎えたバレンタイン、遂に美人でお金持ちの学園マドンナが味覚音痴くんにチョコを渡す日がやってきて……彼らの関係に大きな転機が訪れるのでした。
なに?
ありがちなラブコメっぽい? とんでもない!!
結末、キャラクター、発想。全てが高品質で面白い良作です。
クッソまずいチャーハンを「美味しい」と頬張る彼に、いったいどんなチョコを渡せば喜んでもらえるのか? この独創的なバレンタインシナリオへのアプローチと「味覚音痴のまさかの真相」には喝采せずにいられませんでした。
金持ちで嫌味なだけでなく「筋をしっかりと通す」ライバルや、そのライバルを侮辱した友達を「怒れる」主人公の性格も読んでいて気持ちが良いものです。
作中でも最後に語られる通り、どんなに平凡で陳腐な料理であろうともセンスある料理人の手にかかればご馳走へと生まれ変わるもの。これこそが創作の醍醐味です。ファンタジーの始祖トールキン先生もそう仰っていますよ! 奇抜な創意工夫を施したオリジナルマズ飯よりもずっと立派で読者の満足感が違うのです。故に人はそれを王道と呼ぶのでしょう。
ラブコメ好きであれば誰もが納得するような逸品。お時間があれば是非!