第2話 幼なじみ
今どき珍しく、ご近所同士で同じ年に子どもが生まれ、私と学くんは、同じ保育園、同じ幼稚園、同じ小学校、そして同じ中学校、同じ高校と、常に一緒にいた。
よく、サラリーマンが、奥さんより上司と一緒にいる時間のほうが長いよ、と自虐的に言ったりするが、私と学くんも、寝ている時間を除くと、それぞれの家族といるよりも、二人で一緒にいる時間のほうが長いんじゃないかと思う。
そんなふうに、ずっと一緒にいる学くんも、やっぱり家族とは違っていて、高校に入ってからは、少し異性として意識するようになった。
学くんは味覚はおかしいが、それ以外はまともだ。というか、かなりのイケメン。小顔にパッチリした目、形の良い鼻、歯並びの良い口元、すらっと伸びた身長と、雑誌にモデルとして載っても不思議じゃない。
成績だって悪くない。ずば抜けて学年トップクラスというわけではないが、クラスではコンスタントに上位をキープしている。
部活は吹奏楽部で、ホルンを演奏しているが、運動神経が悪いってわけでもない。もちろん、運動部のトップクラスにはかなわないけど、成績と同じく、こちらもクラスでは上位陣だ。
ようするに、普通にモテるのだ。きっと、街なかでスカウトとかされないのは、味覚のおかしさがかもし出す、そこはかとない怪しい雰囲気に、スカウトマンたちが、何か違和感を感じているからだろう。
それに引き換え、私はかわいくなかった。
たいていの女の子は、自分のことを、中の上ぐらいかわいいと思っている、というアンケート結果があるらしいが、私は、中の下から、下の上だった。
自分よりも、かわいくない子がいると思っているあたり、私は容姿だけでなく性格もブスなんだろう。
私のお母さんは美人だ。性格もすごくいい。料理もうまい。
私はかわいくない。性格も悪い。料理はド下手。
なんで、私はお母さんに似なかったんだろう。お母さんに似れば、学ぶくんとも釣り合ったのに。
ちなみにお父さんはブサイク。料理はできない。私は、残念ながらお父さんに似てしまった。まぁ、お父さんの性格は悪くないけど。
お母さんだったら、もっとイケメンと結婚できたのに、そうしたら、私も美人だったんだろうな、とたまに考えることもある。お父さん、ごめん。
私と学ぶくんは、ただ幼なじみだという理由だけで、よく一緒にいる。もし、幼なじみじゃなかったら、高校からの知り合いだったら、きっと、学くんには全く相手にされていないんだろうな。
学ぶくんと一緒にいるのは、楽しくて、少し自慢げでもあるのだけど、ちょっぴり複雑な気持ちも感じていた。
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