旅医者と空色タマゴ
羽鳥(眞城白歌)
旅医者と空色タマゴ
序.『愛してください』
『この子を愛してください。それだけで十分です』
朝起きたら、そんな走り書きと一緒に、布の包みが枕元にあった。
寝起きのぐしゃぐしゃ頭を
「……えーと」
本気で状況が分からず、ラディアスはもう一度メモを見た。
何かとてつもなく理不尽なことを押しつけられた気がする、……のだが。
覚悟を決めて包みを膝に乗せ、結び目をほどいてみる。柔らかなタオル布の間から出てきたモノを、見て。
ラディアスは今度こそ本気で困惑し、眉を寄せた。
膝の上、厚い真綿でくるまれた、空色のタマゴ。
大人の両手に収まる程度のそれは鳥の卵にしては大きく、幻獣のものにしては小さい。
「
心当たりを呟いて、そっとてのひらで撫でたら、ほんのり温かかった。――生きている。
今のところ恋人はおらず、友人にも親戚にもこんなものを自分に押しつけてくる心当たりなどない。だからといって放っておく気にもなれなかった。
はぁ……、とため息が口から漏れる。
たまごを包み直し、懐に入れてその上から衣服を着ると、
ラディアスは
そして彼は医者でもあった。
この小さな、誰のモノとも知れない置き土産が自分にどれだけの厄介事をもたらすのか、想像できないわけではなかったが。
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