5月5日(水) 広島市中区小網町にあるイタリア料理店「スペランツァ」でランチする。

広島市中区小網町にあるイタリア料理店「スペランツァ」でランチする。


3年前に1度だけ訪れてとても美味しい時間だったと記憶している「スペランツァ」さんで2度目のランチをした。


今回はメイン料理を付けてのコースとなり、遠慮せずにワインも飲む連休の最後らしいのどかさで、緊張感のないやや下卑た会話の食事時間を楽しんだ。


凝縮されても重くならないほどよい果実味の赤ワインはタンニンが爽やかで、写真を撮る前に前菜の広島サーモンの皿に手をつける。海よりも川魚のイメージを浮かばせる鱒らしい味色を持ったサーモンで、白いピュレに使われた野菜は聞いたそばから名前を忘れたが、根セロリらしい風味に舌はとろっとする。ほうれん草入りのクスクスが細かに柔らかな食感と炭水化物らしい豊かな味を付け足し、さっと済ませるのではなく、最初から目の前の一品に向かわせる料理の大きさがある。


続いて山菜とホタルイカのパスタが運ばれると、ひさびさにたっぷりの湯に茹でられる引き締まったパスタの歯ごたえを感じる。トマトがとても滑らかな甘さを持ち、臭みと重さを削がれたホタルイカはからっとした白い味の中身に仕上がっていて、生々しい野趣の落ち着いたわらびらしい山菜はニンニクとオイルのソースに絡んでぬめりと香ばしさを軽くもちあげる。


前回もたしかニョッキを食べたのを思い出す次の皿は、卵黄とコクの深いチーズが強い乳白色の味を出し、そこに優しく暖かいのだが、滋味深さに洒落っけのあるニョッキの味が明確に温度と共に口を広げる。


メインという名前にふさわしい豚肉のローストは、パプリカやトマト、もしくはナスなどの夏野菜が生み出す濃厚な甘さを持ちながら、どことなくレモンを感じさせる鮮烈な酸味を前から広げていて、明るく輝かしく、それでいてたっぷり栄養を持ったソースが厚い豚肉の存在感を大きく引き出している。より爽やかで薬草らしい風味を持ったルッコラだけでなく、ローストした筍や小さな白い根菜の葉の香ばしさなどもあり、肉以外の素材も土の持つ強い味を見せている。そしてこんがり焼けた外側の香ばしさに、胃を落とさせない太い脂身が甘く優しく、まっすぐ火の入った真ん中の綺麗な肉の色合いが豚肉らしい淡泊さを持っていた。


デザートは、トンカ豆の白く黄色いソースがバニラのような風合いながら強い芳香は放たずに奥深く、花のような派手さよりも慎みを持っており、見事な舌触りのココアの濡れた肌は、パウダーの香り良さをたっぷり含んで色っぽく溶けていく。


望んでいたカウンター席でオペレーションを眺めながら食事したかったが、テーブル席でかしこまって料理と向き合うのも十分に美味しかった。ソースの作りや味の比重はイタリア料理らしい重さと主張があるものの、シンプルながら細かい素材の仕上げは日本料理のようでもあり、レストランらしい人数の連携によるサービスは多くの人が楽しんで過ごせる間口の広さと味のこだわりも感じることができた。


3年前の記憶はより確かとなり、休日の豪華なランチを飾るのにふさわしい「スペランツァ」さんの昼時だった。

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