4月23日(金) 広島市中区本通にあるパブアンドバー「PUB and BAR PIC」で飲む。

広島市中区本通にあるパブアンドバー「PUB and BAR PIC」で飲む。


誰かを誘って飲みに行くという行為はここ十年の間に一度もない。数ヶ月前に男同士で飲むという滅多にない楽しい時もあったが、誘われれば行くのがほとんどで、自分から誰かを呼んでどこかへ行くというのは、幼稚園児の頃から数えても人生の中でほとんどない。


きっと変化なのだろう。そんな自分が人を誘って「PUB and BAR PIC」さんへ行った。ただ慣れない事だったので、夜の早い時間にバーへ行くということに認識の違いがあって、一人の世界の中にいると常識がずれやすいことを確認した。どこかで飲んで食べ、二軒目三軒目に選ばれやすいのがバーで、飲み始めから選ぶ店ではあまりないそうだ。


もちろん決まりはないのだが、一杯目はビール、次にハイボール、そのあとレモンサワーなどの流れがあったり、まずスパークリングか白ワイン、次に赤ワインで、さらに赤ワイン、などのような段階もあるだろう。しかし一杯目から熱燗を選んだり、最初に炭水化物を食べ、それから前菜に戻ったりする自分は、時折社会生活の中で、鏡よりもむしろ既成概念の真反対を感じたりする。それは会社の中での上司への対応や部下への態度でも同じことで、価値観は多数決によって時に間違いのレッテルを貼られるようなこともある。


そんなややこしい事を話す「PUB and BAR PIC」さんでの飲みではなく、「そっか、バーはもっと遅い時間に行くんだ」という率直な気づきを発見するのと、すこしずれているくらいが自分の個性だと前向きにとらえるのみだ。そのようにプラスに思わせてくれるのがその場面で対応してくれる人の差で、その違いこそ人間関係の中で自分をどのようにあるか良くも悪くも位置づけしてくれる。


鍛高譚ジンを注文して、キューブの氷角がいつも綺麗だと思っていたロックで飲む。これも初めてになり、一人飲みでさっと風味を味わって帰るのと異なる。穏やかな味の中に果物らしい甘みや柑橘の風味もどことなく感じつつ、焼酎とは異なる淡い紫蘇の香りも閉じ込められている。


次にジョージ・クルーニーの関わったカーサミーゴスのメスカルをストレートで飲む。かっと花開くアガベの風味よりも、すこし丸くて飲みやすい味わいだ。


そして同じメーカーのテキーラブランコもストレートで飲めば、メスカルよりも風味に複雑さと色気が備わり、これも強く当たらないフレッシュな味わいに鮮明な彩りが変化する。


誰かに会うというのは、修正と確立の行為だろう。刺激を受けて自分を変化させつつ、自分だけが持っている価値観を揺るぎないまま磨く。一人ばかりの世界だと、やはり偏ってしまう。


というわけで時間の早い今夜は「PUB and BAR PIC」さんの二人にはいつも以上にお世話になり、男同士だからこそのややイリーガルで幼稚な会話も交えて楽しむことになった。認識の違いこそ勉強で、一人という状況の在り方を見つめ直すことになる。堅苦しい振り返りは一人あとあとのことで、貪欲にお土産をたくさんいただき、ゴールデンウィーク中に行われるという裏袋の角のテキーラ祭りに寄ろうと思いつつ、普段の自分ではない新鮮な行為に新しい世界が開ける夜だった。

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