3月22日(月) 広島市中区榎町にあるパティスリー「Aube Patissier Shinjimori」のケーキを食べる。

広島市中区榎町にあるパティスリー「Aube Patissier Shinjimori」のケーキを食べる。


調子と気分にリンパが一致しない日らしい。月曜日のわりに休日の影響少なく体は動き、頭もわりとはっきりしているだけでなく、目もよく見えて感情も安定しているのだが、普段ないリンパ腺の腫れと痛みがあった。ヘルペスがざわついていたり、金属アレルギーの反応が出ている時はよく腫れるが、そういった症状はなく、どうして体は元気なのにこうなるのか不思議だった。


昼に家に帰ってタブレットを触っていると、今日はWorld Poetry Dayと海外の記事から知る。そうか、詩の日なのかと調べると、どうやら3月21日がユネスコに定められた世界詩歌記念日らしく、今日はもうその日を過ぎていた。


美術、音楽、詩を含めた文芸にファッション、どれも小さい頃にはわからないことで、朝昼晩と食事の時間はいつも苦痛だった。それがいつからか反転して、大人になるにつれて子供になるような気もするし、男でありながら女のような性質も表れてくる。


体調の良さとリンパ腺の痛みを成長に重ねることにはならないが、今日は退勤後に飲みに行く気分ではなく、なぜかケーキを買って家に帰りたかった。「Aube Patissier Shinjimori」さんに行けばたいてい2個しか買わないはずが、今日は3個指さしたことに普段と違う心境があるらしい。


ちょっとメランコリックだそうだ。そこに昨日だった詩の日を触媒に意気揚々と言葉を並べればまだしも、体調の判断は偽物らしく、リンパ腺こそ気分を如実に表しているようだ。


春なのに、マロンが多い。オランジュのクリームに今回もチョコはうまく組み合わさり、小さなさくらんぼのような酒漬けは鮮烈な風味で赤ワインが持つ投影と勘違いさせる。カシスは酸味が前に甘さは後で、アマングは厚いクリームにしっとりした生地を持つ。どれも食べたことのあるケーキで、だからこそ今日もおいしい。


日々変化して同じ自分は存在しない毎日でも、今日はやけに変貌した自身にあるようで、気分も体調も一日の体の疲れも、月曜日らしい軽さとそうでない重さがレイアーにもならず、一枚岩にもならず、薄っぺらな生地として熱にも膨らまないようだ。


こんな日は空虚が大きい。だから陽気に酒へ向かわず、しっとりケーキを食べて家に過ごす内省的な日なのだろう。おそらく、それは寒さが一番関係している。突発的な雨に降られて嘆きにもならない自転車をこぐ昼に、どうしてこんなに落ち着いているのかと空気ばかり吸っていた。たくさん眠ったから元気なのではなく、やたら天気と空気に感動するのは、もしかしたら弱っているから。春も秋も、天気も穏やかさも、なんら確証を得られない日だ。

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