3月20日(土) 広島市中区本川町にある書店「READAN DEAT」で「甲斐啓二郎 写真展『Shorve Tuesday』」を観る。

広島市中区本川町にある書店「READAN DEAT」で「甲斐啓二郎 写真展『Shorve Tuesday』」を観る。


明日の最終日の前に、気になっていた写真を観に「READAN DEAT」の「甲斐啓二郎 写真展『Shorve Tuesday』」へ行った。


SNS上の紹介からしてエネルギーに溢れていた写真は、実際に前にすると変に折れ曲がった樹木の枝ぶりを観るような奇異を感じた。しかしそれは自然のままの状態であって、フットボールという言葉の既成概念とは異なる人数とルールによる暴動が写されていても、やはり環境の条件によって生み出された理由のある変異なのだろう。


単純なるエネルギーを感じる写真で、まずデモを思い浮かべる画面となっているが、こういう状態はそれほど珍しくないだろう。一人一人の動力は定められたゴールに向かって一個のボールに費やされ、おそらく乱れに乱れた力動は渦ともうねりともなって、夕刻の空に見られる羽虫、あるいは小鳥の群れの流動、海中に移せば鰯の群れが鯨から逃げる滑らかな動きにも似たものだろう。


フィルムで撮られたという写真はややこもっている。だからこそ瞬間としての動きは静止されており、手付きや顔つきにフットボールに合わない、むしろ水面に向かうような身体運動があり、バッファローの大移動のような異常な熱量が男という性別の集合に感じられるのだろう。


写真集はグルジアやボリビアだけでなく、日本の秋田や長野も撮られている。それらは展示されていないが、写真集をめくると今の現代にこのような祭りが残っているのだと驚かされる。各ページには昭和のフィルムと共にすでに消失したような昔ながらの男の顔があって、意味もなく生まれた人間という個体の日本の地方における不可解な因習にしがみつく生体集合の一過性らしく、むしろ飛蝗現象に近い数多による個体変異のようでもある。


夏の花火大会だけでなく、正月の神社でも、朝の満員電車でも、人は大勢集まって動くことはある。その目的はこの写真と違ってそれぞれ異なっていても、一つの目標に向かいながら、各々の思惑がダイナミックなうねりを生んでいるのだろうと思わせる展示会となっている。

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