2月28日(日) 広島市中区袋町にある立ち呑み店「立吞み 魚椿 袋町店」で飲んで食べる。

広島市中区袋町にある立ち呑み店「立吞み 魚椿 袋町店」で飲んで食べる。


すこし弱気な時はあるもので、本人は三ヶ月振りくらいにやってきたと思っても、おそらくそんなにひさしぶりではないだろう。


ちょっとした事柄がどうも笑えず、行動の一つ一つに懐疑が生まれてしまう。そこに無理に自信を立てて笑い飛ばそうとしても、反応は刺々しく、積雲のように早く大きく考えは浮かんでしまう。怪我と一緒で、起こった反応は消そうとしてもむやみに消せない。


おそらく、それでもマシな方だと思う。そもそも元気に動いていて、元気に動いているから。


夜に飲み屋を探すのは、休日を引きずる為だ。明日からの日常は多くの人にとって避けたいもので、成長よりも葛藤が勝ると、本人の意識よりも先に街歩きと香りを探す。


そんなわけで何件か目当ての店に向かい、迷いに迷ったあげく「立吞み 魚椿 袋町店」さんに入った。誰に対しても打ち解けにくい人間だと決めつけているから、ちょっと、そっとしてもらいたい時がある。それがいつもでも、他人のように気軽に人に寄り添えないから、なんだかうっちゃっておきたい気分になる。


しかし立ち呑み店は時にそうもいかない。元気な店は威勢が良く、愛知の熱燗、それから竹炭の入った濁りを飲み、あん肝のぽん酢、あさりの酒蒸し、それと小鰯を食べると、快活な店の雰囲気につられて口が開いてしまう。


酔って何を話しているのかわからないのに。人と人との距離だけでなく、自分の持っている常識さえ疑っている今において、正解はより小さくあるようだ。


はたして今夜の飲み食いはミスしていないだろうか。そんなものがないことはわかっているが、間違いを犯さないように気にしている小さな存在を知っている。


時に弱いと嬉しくなる。それがおそらく成長につながるからと見込んで、それらを大歓迎する。


夜の空鞘公園ではとある人がバットを振り、木立の間から満月がてかてかとのぞける。ちょっと酔って書く文章があり、弱さはそうも続かず、続いたら続いた分だけ歓待しようと、春めいた夜のベンチで走馬燈のように浮かぶ「立吞み 魚椿 袋町店」の一時が懐かしく落ち着く。

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