1月15日(金) 広島市西区天満町にある蕎麦店「手打出雲そば いいづか」で三味そばを食べる。

広島市西区天満町にある蕎麦店「手打出雲そば いいづか」で三味そばを食べる。


とあるお店で「おいしいよ」と教えてもらったのはいつのことか、いこういこうと思いつつ、なかなか行けずにいた「手打出雲そば いいづか」さんでようやく食べることができた。


初めて入店して驚いたのは女将さんが非常に心根の良い人で、入れ代わり立ち代わり常連さんが和む中でも一見さんお断りという雰囲気がまったくなく、仏頂面して入ってきた自分に対して真心からの「いらっしゃい」が伝わってきた。


人の心は他人には見えないが、そう感じさせるのは並大抵のことではない。忙しさや体調によってはほころびが出てしまうもので、まっさらにそれを表すのは普通にしていたらできないことだ。もし普通にそれができるなら、そもそもその人は特別な人にちがいない。


そんなわけで、安心して一人蕎麦に音を鳴らして啜った。ピザでもうどんでも、野菜でも刺身でも、噛めば噛むほど美味しいのは美味しいものの証拠で、平たい蕎麦は田舎そばでも雑な味はなく、すっきりした中で風味がどんどん口に広がっていく。つゆは第一に甘みが優しく、凛とした中にかつおやこんぶが見えて、奥行きはあるが重たくなく、黒ではない紫を感じる艶がとてもおいしい。


というわけで、よく噛んで完食した。他のお客さんはみなペイペイで支払っていたから、それを持たない自分はふと緊張が走り、会計時に「現金は使えますか」と伝えると、「それはもちろん」という返事のあとに真率なエスプリによる切り返しでつながれたものの、いくぶん舞いあがっていた自分には覚えきれなかった。ただ、とても良い笑顔だった。


良い人、良い味、良い雰囲気。噂は方方で聞く通り、「ももや」さんへ行く前の満足な腹の足しとなった。

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