9月30日(水) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「ソロ」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「ソロ」を観る。


1970年 フランス 87分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督:ジャン=ピエール・モッキー

出演:ジャン=ピエール・モッキー、アンヌ・ドゥルーズ、デニス・ル・ギヨ


数日前に観たアフシア・エルジ監督も自身の作品に主演していたが、今日の作品も色気漂う主人公をジャン=ピエール・モッキー監督が演じている。拙い演技とはとても言えず、自信溢れる眼光の男はやや立ち後れながら守る弟の為に奔走していて、作曲家であって協奏曲の弾き振り、脚本家と演出家であって役者、それらと同じにするのは間違っているかもしれないが、なんら劣ることなく演技は作品の中で光っている。


五月革命の影響が色濃くあるこの物語は、既存の価値観への疑念が過激に暴走する若者を描いており、ヴァイオリニストで宝石泥棒という優雅な職業はもはや古く、金と権利で社会を汚すブルジョワ達からエキスを吸うことは何の変革にもならないと新しい考え方は断定する。前半からサイケデリックカラーのデザインが部屋に表れて、カウンターカルチャーの真っ只中で上映数年後に起きる日本赤軍の銃乱射事件を思い起こさせるテロ行為は、そっくりそのまま数年前のシャルリー・エブド襲撃事件を連想させる。暴走する弟は爆弾でもって次の犯行へと向かっていき、とんだことで事件の共犯者になった兄は唯一の家族の絆をしっかり握って探し回る。


日活映画を思い起こさせる自動車を使ったアクションが多く、テーマ曲が繰り返し流れるのも似ている。こちらが本流か、もしくはアメリカあたりから派生したのかわからないが、アウトローを描いた熟成は顔立ちの差で大きく異なり、黒いスーツに黒い帽子という出で立ちの存在感は世界が違っている。やや難のある筋と運びはすこし気になるが、周到に仕組まれた演出は常にコインの裏と表のように同じ画面の中で人物がすれ違っていく。ほんのわずかでもこすれてしまえば物語は大きく変わる内容は、爆弾を設置するシーンの安っぽさや、爆発を映像におさめないやり方など多彩なアイデアに凝っていて、悪くも良さがところどころに目立っている。


真紅のエナメルのトレンチコートなどは特に時代を感じる点で、古き者は倒れ、あまりに偏狭な社会思想かもしれないが、それでも新しい若者に託していくラストシーンの列車の進行は、そのイデオロギーさえも今はもう古く、特に日本においては思想も何もないように感じてしまった。

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