10月1日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「赤いトキ」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「赤いトキ」を観る。
1975年 フランス 80分 カラー Blu-ray 日本語字幕
監督・脚本:ジャン=ピエール・モッキー
出演:ミシェル・シモン、ミシェル・セロー、ミシェル・ガラブリュ、ジーン・ル・プーラン、エヴリーヌ・バイル
物語の筋は、観間違いかと疑っている間に終わるラストのシークエンスで奇妙に結ぼれてしまい、これほど不可解な気分で劇場をあとにさせる作品も珍しい。あとあと知ったのはオマージュがいくつか含まれているらしく、乱雑に展開されるようでも複線は巧みに配置されていて、くだらないと素直に笑ってしまう場面が多いからこそ、凝った演出によるコメディが幅をきかせている。
昨日、一昨日と観た作品同様にセリフの質は高く、口説き文句、政治論判、それらが同じ程度で大ぼら吹きなどに込められている。「ミスタービーン」を生んだ国と勘違いしてしまったのは、まじめ面したまま静かなおかしさを引き起こすシークエンスがあるからで、こういった笑いを好むのが国民性だと不確かな分析をしてしまう。
なによりこの作品が豊かに仕上がっているのは人物の造形に尽きるだろう。ギリシャ語を話せないギリシャ料理のレストランの店主と不届き者のシェフ、嘘ばかりついてしまいには嘘が本当になる素晴らしき爺さんとスタイリッシュな黒人の子供、サイボーグのような傷痍軍人とその部下達など、カリカチュアが枠にはまらずに勝手に動き出し、この監督が持つ神経の行き届いたリズムによって進行する。
感嘆するのはこの国の豊饒なる発想で、これほどの人間達をどうやって作り出すのか。さすがモリエールの国だと嘆賞するほど、他国が羨む多くの文化を築く特異性の魅力はおかしく散らばっていて、結局心ある物語になるのだと思っていたからこそ、ぶった切られたような黒いユーモアの最後に目が点となってしまった。
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