9月29日(火) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「今晩おひま?」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジャン=ピエール・モッキー監督の「今晩おひま?」を観る。


1959年 フランス 78分 白黒 Blu-ray 日本語字幕


監督・脚本:ジャン=ピエール・モッキー

撮影:エドモン・セシャン

美術:マックス・ドゥーイ

音楽:モーリス・ジャール

出演:ジャック・シャリエ、シャルル・アズナブール、ダニー・ロバン、ダニー・カレル、エステラ・ブラン、アヌーク・エーメ、ベリンダ・リー、ニコール・ベルジェ


連日観ている他民族国家の現代フランス映画とは異なり、古き良きシャンソンが似合うこの作品はシャルル・アズナブールが出演しており、心にぽっと光を灯らせる良き古き映画だった。


タイトルロールに浮かれるように、男三人がセーヌ河岸を下りながら幾人かの女性に声をかけ続ける長いカットからして、軽快な踊りのリズムで気分をよくさせる。下りきるとモノクロに妖艶が漂うジャック・シャリエの端正な顔は立ち、見知らぬ男であるシャルル・アズナブールと一緒に女性探しの旅へと街に出かける。


それからはユーモアと気取った言葉が長めのカットに広げられて、この世の華と思われる美にかたどられた女優たちが現れては去っていく。ナンパを主題におのおの理想と家庭という異なる女性像を求める男性の凸凹コンビは、誠実だからこそ機知の乏しさでうろうろする小柄な男は攻めることが下手で、彫刻に耐え得る口の上手い男はすんでのところで女性を遠ざけてしまう。


あきらめずにナンパをし続ける間に、丸いボディの車は象徴的な街を舞台として紹介していき、この物語にどこより適した都パリに生きる女性それぞれの心が巧みなセリフで浮いては消える。ロマンチックという言葉にすれば陳腐になる形容がそのままあい、ナンパもさることながら、恋の手引きと思いこめるほど面と面が向かい合う男女の駆け引きが映し出される。


前半からもったいないと手を伸ばしてしまうほど女優がいなくなってしまう。それはいくら欲しくても手に入らず、次へ次へと移ろっていく男女の関係そのもののようで、再度画面に現れて欲しいと思っても二度と登場しない。いつまでも引きずっていれば、次はなかなか出番は得られず、動かなければ周囲も一緒に動いてくれない。それを恋のキューピットとしてラストに一人車を走らす男前は、まさに逢い引きをして男の友情を最後に示すことになってしまう。


長くない上映時間は機知に富んだリズムよい演出に進み、あと少しというところで躓いて場面は変わってしまう。そんな前向きな浮き足が人情に満ちていて、ホームパーティーの花々しさは破廉恥な品があり、女優たちの衣装は当時を感慨深く想像させる。積極性がすべて始まりだとあわただしく物語は伝えていて、そこに優しさが含まれれば、男女を問わず魅了される人物となる。声をかける怖さと細工は抜きにして、やはり勇気が接触を始めさせるのだと、関心こそ愛という行為を心豊かに描いた作品だった。

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