音楽、映画、美術、舞台、食事、文学、観光についての体験感想文集
9月24日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでザブー・ブライトマン、エレア・ゴベ・メヴェレック監督の「カブールのツバメ」を観る。
9月24日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでザブー・ブライトマン、エレア・ゴベ・メヴェレック監督の「カブールのツバメ」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでザブー・ブライトマン、エレア・ゴベ・メヴェレック監督の「カブールのツバメ」を観る。
2019年 フランス、ルクセンブルク、スイス 82分 カラー Blu-ray 日本語字幕
監督:ザブー・ブライトマン、エレア・ゴベ・メヴェレック
脚本:ザブー・ブライトマン
声優:ジタ・アンロ、スワン・アルロー、シモン・アブカリアン、ヒアム・アッバス
上映開始15分遅れて入場する間に女性囚人の公開処刑が行われたらしく、セリフから推測したその出来事が二組の夫婦のもつれあう悲哀な因果の一つとしてありそうだ。
光と影のコントラストがやわらかい水彩画の背景で、輪郭線の黒くはっきりした、また同時にその線を持たない登場人物がアニメーションで動いている。日本人はどうしても土壌が自国とアメリカのアニメにあるので、西洋の異なった作画を見るとそもそもの土台が異なっていると感じる。構図とアクションは映画らしい遠近があり、手前に戦車を大きく配置して、横を通り過ぎる人物がその背後に消えていく動きなど、やはり映画らしい雰囲気を持っている。
ただ残念なのがフランス語の使われていることで、回顧の欲を持って足を運んだ自分にとってパシュトー語でないことは痛恨となり、幻惑的で意気の強い子音がないと情感は別世界となってしまう。そうなると登場人物の反応もフランス人の解釈による西洋人らしいものではないかと疑ってしまうが、当時のアフガニスタンの実況はうまく描かれているだろうと思ってしまうのは、狙撃を待つ間にナッツを頻繁に口にしたり、戸外の長椅子の上で片足の膝を立ててそこに腕をのせるというイスラム諸国で目にする男の基本姿勢だったり、チャイハネらしき店で茶を飲み、握手を交わし、抱擁する社交の挨拶が登場するからだろう。
言葉の好みは別として作品内を見れば、飛び跳ねたり尖ったりするアニメーションはなく、平面のイラストではあるが写実的な作品で、ちょっとした人物のやりとりや仕草はとても実感がこもっている。作品名からするとカブールになるだろう、坂の多い街の遠くにはヒンドゥークシュらしき白い山並みが見守っている。1998年という時代設定が色濃く思い出せるように、中古の日本車に乗ってやたら銃を乱射したり、廃墟となった建物に布がいくつも翻ったり、競技場で野蛮極まる処刑を行ったりと、ニュースだけでなく実際に目にした風景との一致がツバメの鳴き声の中で流れていく。
ISの出現する前のタリバンに混乱した国には未来がないと思われるほどで、ゆがめられた歴史教育や、死後は臭いを発するはずがない聖戦士など、当時の情勢が鮮明に伝わってくる。漸次にのぼる哀調はラストに暴発するが、異様な風貌に映るチャドリがキーとなるこの物語で思い出すのは、カブールで布を買う時にバクシーシに寄ってきた女性で、網目の見えない無言の姿はしつこく金をせがんで店内までついてきたが、適当にあしらいながら布を試着した自分の姿に店主が声で褒める隣で、腕を出して親指を立てた水色の姿が忘れられない。店内に膨らんだ大きな笑い声と声なき隠れ蓑の振動のあと、つい出した自分の金を受け取らない態度があり、どれほど感銘を覚えたか。
女性の権利を全身に閉じこめられたあの姿にどれほどの表情があったのか。懐かしむことを目的に映画を観にやってきて、自身の宝といえる思い出にやるせなさがこみ上げてくる。もう二十年になるだろう、今のアフガニスタンを思うも、禍根は強く容易にならない今を浮かべてしまう作品だった。
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