9月25日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでアフシア・エルジ監督の「君は愛にふさわしい」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでアフシア・エルジ監督の「君は愛にふさわしい」を観る。


2019年 フランス 107分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督・脚本:アフシア・エルジ

出演:アフシア・エルジ、ジャニズ・ブジアニ、ジェレミ・ラユルト、アントニ・バジョン、シルヴィ・ヴェレイド


映像文化ライブラリーでフランス映画の特集があると、必ずと言っていいほどややこしい女性を主人公にした作品がある。日本人に「アメリ」のような女性像が生み出しにくいように、今日の映画でも異性を越えた人種と国籍の差を感じる理解しがたい若い女性が恋に悩んでいた。


遊び人の恋人に振り回されて苦しむ女性、などといえば語弊にしかならないだろう。しかしそのような文句で片づけることもできるほどよくわからない物語と思えるのは、若く繊細な女性の心理が扱われているからで、布石や合理性などの意味を持たない一過性の体の関係が起こっては消える。手持ちカメラの振れに追跡、そこに極度のズームが様々な角度で体を捉え、唾液の音が口に感じられるほどの口づけをしつこく描き出す。あからさまな性行為よりも絡まる接吻シーンが多いのは、肉体の快楽よりも心の渇望の狂おしさが描かれているからだろう。


アメリカ同様の他民族国家としての様相を持つ現在のフランスらしく、サハラ砂漠の境界ではない一大陸としてのアフリカ人だけでなく、中東地域や東欧出身の人物も登場して、アジア系の顔立ちをもった男がナンパしてくれば、アジアの料理を作ることにこだわったりする。監督でもある主人公を演じるアフシア・エルジさんがインドかペルシャあたりの憂いを持った美人で、呪術的な印象を顔に持つように、占いや呪いなども物語に関連してくる。自分という男性を引き合いに出せば、およそ占いなどに興味は一切なく、そんなものを信じる気持ちは幽霊を実体として恐れるほど無意味に思えてしまうが、託宣を請い求めるほどに若い女性は頼りないのかもしれない。


ドラッグクイーンが饒舌で恋の手ほどきをしたり、特定の人種が持つ性格をあてこすったり、ボリビアまで一人旅行しながらラッシュを購入して出会い系サイトに登録したり、いったい何を求めて登場する人物は浮動しているのだろうかと首をかしげてしまう。


理解できないがなんとなくわかる。そんな言葉を数ヶ月前に人から聞いて、それが適当に思える内容だった。人生計画よりも瞬間に生きる若者の特質がスケッチされている。途中までは観ていてうんざりする内容だったが、ラストに主人公がその言葉を感情と共に口にした時、まばらだった映画の内容がすっと腹に飲み込めた。描かれていたのは、とにかく寂しい女性のありのままだったのだ。

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