6月13日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで浦山桐郎監督の「夢千代日記」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで浦山桐郎監督の「夢千代日記」を観る。


1985年(昭和60年) 東映(京都) 128分 カラー 35mm


監督:浦山桐郎

脚本:早坂暁

撮影:安藤庄平

音楽:松村禎三

美術:井川徳道

編集:玉木濬夫

出演:吉永小百合、北大路欣也、名取裕子、田中好子、樹木希林、斉藤絵里、小田かおる、渡辺裕之、白龍光洋、三條美紀、横内正、左時枝、岸部一徳、市川好朗、小川真由美、河原崎長一郎


2時間というのは大きな目安となっていて、数ヶ月振りにこの鑑賞時間を体感すると途中で飽きてしまう自分は否めず、トイレに行きたいわけではないが、そわそわして考え事に逸れてしまう事が増えてしまう。


おそらく先月からだろうが、今月の映像文化ライブラリーの作品の並べ方には連関があり、昨日の白血病が今日も冒頭から大きな主題として吉永小百合さんに提示されていて、物語途中に発覚して大きな転換を起こすのではなく、気が重くなる要素が中途でど忘れするような群像物語が展開されていく。


死の宣告を受けた人間のもがきや苦悶に焦点を当てずに、むしろ生きている人間の波乱の一端が様々に組み合わされていて、途中でどの人物がどうなっているのか忘れてしまう点もあった。この分散された登場人物の物語の描き方だからこそ、やや浅薄と思われる人間模様は否めず、死の恐れがときおりナレーションの形として説得力ある吉永さんの声で挟まれるものの、深刻ではあるがそれほど痛切に感じられないのは、作品全体に貫通している刑事ドラマのような編集のリズムとカメラアングルにあるのだろう。


湯村温泉を舞台に日本海も含めた風景や、情緒を失わずに人々を包み込んでいくうまさも、やはりなにかの事件を扱うドラマで観たような運びとなっていて、自然風景と心象風景を重ね合わせるわかりやすさが、ある種の退屈さまではいかなくても、風味のくどさが足りない素っ気なさに思えてしまうのは贅沢な感想だろう。


とはいえ、この映画作品は最初から最後まで特別な花である吉永小百合さんを活けた物語となっていて、途中の芸者の踊りなどは余命宣告された白血病の人間がするべき行動かはその病状を知らない自分には真偽を疑うこともできないが、吉永さんの舞い姿はまるで坂東玉三郎さんをメインに映画館で歌舞伎作品の上映をするような扱いとなり、ラストシーンなどがその典型としてこの作品の意図を語っているようだった。


女体が登場するシーンは少なからずあり、濡れ場もあってやや下世話で、ラストにつながる緊迫したシークエンスも冗長に感じてしまった。それは2時間を少し超える上映時間も関係しており、やはり玉の人物である吉永さんを大切に扱った贔屓が見える作品の姿勢もそうだったのだろう。

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