6月7日(日) 広島市中区西十日市町にある朝食カフェ「ホームラン食堂」のおかゆモーニングを食べる。

広島市中区西十日市町にある朝食カフェ「ホームラン食堂」のおかゆモーニングを食べる。


昨夜、「ホームラン食堂」さんのおかゆが食べたいと思っていたら、早起きすることになり、やるべきことも時間内に終わったので、急いで準備して開店前に間に合うように出かけた。きっと人が並んでいるから、食べられなかったらひどく嘆かわしいことになると思ってだ。


待つことなく店内に座ることができたので、自分の時間を持つことにした。ちょうど油のしかれた熱いフライパンに溶いた玉子が流されて、開始を告げるような音に心が弾んだ。食事は料理をただ口にするだけでなく空間と時間そのものを味わうことで、今回で3度目になるが、ここはどこよりも時間を感じさせてくれる。それは食事の提供までの間であって、他の店ならば世俗の忙しさを逃れられずに苛立って待つこともあるが、ここでは運ばれるまでの過程に物語があり、待つかいのある料理が待っている。


運ばれてくる白湯にしても、意味がある。まるでココ椰子の殻を模したような湯飲みの肌合いが軽く、甘く感じる温度の良い湯には、まるで器の持つ土の味が染み出しているような滋味がある。これだけで随分と多くの追憶が生まれる。ただ流れる時間ではなく、ここではすべてが刺激してきて、記憶から派生して想像力が生み出される。


モーニングの内容もそうだ。おかゆのだし、豆の茹でと塩加減、汁の味噌の風味、じゃこにまつわる柚子の鮮度、アスパラの味わい、薄い人参一枚の持つ生命力、梅味噌の小粋、クミンに親しむタマネギの甘さ、スライスの厚みに豊穣さをもつポテトチップスなど、そのなかで、揚げたてがんもは以前と変わらず塩を広げる。


人と話すことは脳を活性化させてボケ防止になるというが、ただ黙って「ホームラン食堂」さんの料理を味わうだけで、どれほど脳の働きをよくするだろうか。


サブレとミニプリンを食べてから、アメリカンチェリーとバナナミントのトライフルを食べる。クリームとミントに合わせてやってくるのは、ここでも塩だ。塩加減なんて小さい頃から聞いているが、実体験はそうそうない。食感の楽しいチェリーとバナナに、染みた生地が噛めば噛むほど一体となってくる。


「あかいはりねずみ」で見知った人とたまたま会い、多くは話さないが、元気そうな顔を見れると嬉しくなる。ベーグルだけでなく、ケチャップとジャムもおいしい「ボノベイク」さんも来ていたので、予約の入っていなかったベーグルを買う。


人の良い常連さんもいる。やっぱり贅沢な店だと、なかなかとれない時間を味わい、一日の始まりがその一日を決めるのだと満足して店を出る。

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