5月23日(土) 東広島市西条東北町にあるブランジェリー「Boulangerie Chez GEORGES」のキッシュを食べる。

東広島市西条東北町にあるブランジェリー「Boulangerie Chez GEORGES」のキッシュを食べる。


近頃ジョルジュさんの食べ物を持って帰ってきてくれる機会が増えていて、バゲット、パンドゥミ、オリヴィエにマカロンなどなど、贅沢なことに自宅にいながら質の高い味を楽しませてもらっている。


今日はとびきりの物を持って帰ってきた。キッシュ、キッシュだ。スウィーツならタルトと並ぶ他にない興奮を呼び起こすこの手間のかかりそうな食べ物は、至高の一品として崇めるほどだ。


昔話ばかりする癖があるのは、未来を見ないからか、心が歳とっているからか、自慢したいからか、理由はいろいろあるにしても、ひけらかしたいのだろう。まあそれでも、やはり個人の記憶があるからこそ個人の感想が生まれるわけであって、パリの安宿に滞在していた時に、近所のブランジェリで働く日本人が残り物のパンを届けてくれることが多々あり、たいていバゲットだったのだが、一度だけキッシュを持ってきてくれたことがあった。金を節約して、かちかちのバゲットにタラマを塗るか、ヌテラを塗るか、それに瓶詰めのオリーブを合わせるかという偏った食生活の中で、冷めて硬くなったキッシュに多くの味の記憶が詰まっていることに感動したことがあった。この時からキッシュは垂涎の対象となり、また持ってきてくれるかと期待していたが、それ以後はなく、パン・オ・ショコラやクロワッサンなどのおいしいパンはあったにしても、キッシュは二度とやってこなかった。なにせ人気があるから、残ったとしても働く人が先に食べてしまうそうだ。


そんなキッシュがまるまるとやってきた。口にできる分量は半分とはいえ、取り合いする必要のないほどあり、舌に狂いなくそら豆の豊かな風味が脳を刺激し、フェネグリークなどのまざるカレーらしいスパイスが豆のくせを香り高く活かし、それにエビの入った卵の味わいは、ほんとうにおいしい。


朝と夕方前にブラックオリーブのスライスが入った妻のフォカッチャを食べ、昼にマルゲリータとティラミスを食べ、夕飯にピタパンに生ハムとパン・オ・ショコラを食べ、デザートにプリンシパルとマスカルポーネカフェという「メゾン・ラブレ」のケーキを食べる前にジョルジュさんのキッシュを食べたのだが、フランスとイタリアの二カ国に海を挟んだ向こうの文化の丸パンもあったが、意図せずに偏った食事となっていた。


休みに入る前の労働後の区切りとして心から明るくなるキッシュを食べることができて、平日と違って夜にどんどん元気になっていくから、やはり食べ物が人を作るものだと快活な気分が眠気をはたいていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る