前のエピソード――４月２６日（日）広島市中区東白島町にあるお好み焼き店「力丸」の肉玉そばのテイクアウトを買う。

広島市西区観音本町にある洋菓子店「洋菓子のシナガワ本店」でケーキを買う。

まだ訪れたことのない「パティスリーお菓子茂」で買おうと思って近くをうろうろしていたら、ついつい天満川を渡ってしまい、「洋菓子のシナガワ本店」を見つけた。新しいとはいえない店構えとなっていて、古臭い味をついつい先入観にあてはめてしまうが、少し前に食べたケーキ屋さんで必ずしもそうでないことを知っていたので、せっかくここまで来たので買うことにした。

比較の為のザッハトルテと、たしかキャラメルアマンドという名だっただろうか、その２つを買った。

ザッハトルテをまず目の前に見て、よく知っている物よりも小ぶりで、コーティングの色艶には上品な洒落っ気がある。フォークを入れると、ジャムはないがチョコの味はなんとも悪くない。コーティングは薄くも奥行きのあるチョコの風味に色気があり、生地とチョコの重なりもくどくなく、かといって安っぽい浮ついた味でもなく、しっとりした重みのバランスがおいしい。値段と味を考えると、これはとても良いザッハトルテだろう。

キャラメルアマンドも上部のキャラメルの味が玄人好みのビターに落ちる一歩手前あたりで踏みとどまり、ひけらかすような知性を欠いた甘さではなく、バランスの優れた深みのある味で、ヘーゼルナッツとアーモンドも上質とあり、生地とクリームの交互の重なりも落ち着きと確かな豊かさを持っている。

値段を考えると、これを提供するのは難しいだろうと思ってしまう。やや色擦れした店の外観の持つ風格は本物で、親しみやすい価格に上質の味が合わされている。どれほどの年数が経っているのか知らないが、古臭い味だろう、なんて思うのは甚だ罰当たりなほどの良い味だった。