4月26日(日) 広島市中区基町に日本料理店「じ味 一歩」のおうちイッポを食べる。
広島市中区基町に日本料理店「じ味 一歩」のおうちイッポを食べる。
お好み焼きをハンドルにぶらさげたまま「これだけじゃ夕飯には少ないなぁ」と考えながら市営基町高層アパートのそばを通りかかったので、自転車に乗ったままショッピングセンター内に入ってみたのは「何かしら中華のおかずでも買えないかなぁ」と思ってのことだ。
なぜ忘れていたのだろうか。「じ味 一歩」さんが開いている。予約せずでも買えるかと即座に店に入ると、炊きあがったばかりのごはんも含めて、どれも買えるとのこと。フォルクローレという言葉を教えてもらって、今はあまり聴いていないが、Juan FalúやDiego Schissi Quintetoをユーチューブのお気に入りに入れて、ことあるごとに流していた。
これは自分も同様だろうが、以前に訪れた時よりも髪の毛が伸びていて雰囲気は異なり、マスクもしているから、本人なのだろうがどうも確信が持てなかった。
大変なんだろうな。こんな言葉を何度も浮かべているが、それは決まり文句のようでありながら実感を持っていて、その感慨は当事者ではない自分にはやはり他人事の意味以外にはありえないだろう。
思わぬ夕飯を買って帰り、それぞれを食べてみた。店で食べた時はどれもがあたりまえの感想しか浮かばない洗練された味で、おそらく初めて上位の日本料理を店で味わう体験となり、それ以降も優れた日本料理を店で食べる経験は持っていない。その時の味の印象とは異なり、新じゃがの芋ひじきから家庭的な味わいを感じ、揚げ魚と野菜の酢の物はよどみない出汁と揚げ物の明るい相性を確認し、豚肉と葉たまねぎとニンニクの芽の味噌炒め煮は、癖に負けない味噌そのものの風味を強く味わった。その中で何よりも心を通過するように思えたのは自家製ベーコンの炊き込みご飯で、紅芯大根の鮮やかな色彩と食感のなかで、米が穏やかに進んでいった。小さいベーコンが全体にかぐわしさを与えながら、トンネルというイメージは決して合わないのだが、そのようなところを汚れなく進んでいくような印象を覚えた。暗さではなく、尖ることのない季節の彩色を若々しい草木として左右に見ながら。
現実問題を述べればどうも自分自身がけち臭くてかなわないが、テイクアウトで再び、少し感じることができた。もう何度思ったことだろう、次は店内で。こう思って見えないウィルスを罵倒することもない。それでは余りに馬鹿馬鹿しいから、その時々を味わう以外にないのだし、それがすべてなのだろう。
この値段ではあまりに心苦しくなる、とても素敵な味だった。
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